失敗続きだった、「核兵器のない世界」への取り組み。そこに一筋の光が差しました。
広島で主要7カ国による外相級会談が行われました。カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国は、G7と呼ばれています。テロや難民問題など主要な国際問題について意見を交換し、「広島宣言」をはじめとする多くの文書・声明を採択して、2日間の日程を終えました。
私が最も驚いたのは、G7外相の広島平和記念公園への訪問が、初めて実現したことです。G7のうち、アメリカ・イギリス・フランスの3か国は核兵器の保有を公表しています。これらの国は「核兵器は現時点では必要だ」と思うから持っているわけで、平和公園への訪問はその態度に反するものと受け止められてしまうかもしれません。実現のため数か月にわたる事前準備が必要だったと報じられていますが、その苦労は察するに余りあります。結果、妥協はあったものの、「広島宣言」という名で共同声明を出すことができました。
注目したいのは、アメリカのケリー国務長官の動向です。アメリカの閣僚が広島記念公園を訪れるのは初めてのことです。また、本来予定にはなかった原爆ドームの見学も提案し、オバマ大統領による訪問も示唆するなど、異例尽くしの訪問でもありました。
一方で、アメリカ世論の制約があったことも見えてきます。G7外相級会談のニュースは各紙の一面で報じられましたが、肝心のケリー国務長官は、ほとんど集合写真にしか出てきません。アメリカ国内には、原爆の投下を支持する国民が未だに60%近くいます。日本経済新聞が、アメリカで行われた世論調査の結果に触れていました。減少傾向にあるとはいえ、65歳以上の70%、18~29歳でも50%近くの人が、原爆投下は「正当だった」と答えているのが読み取れます。そんな中、原爆投下について謝罪しているような写真が報道されれば、アメリカ国内で大論争が巻き起こってしまう。アメリカの大きなジレンマです。
失敗続き、と冒頭に書きましたが、非核の取り組みは世界的に停滞していたように見えます。元々外相級会談はG8で行われていましたが、ウクライナ問題を受けてロシアが参加停止になり、G7になってしまいました。また、昨年行われたNPT再検討会議が、共同声明を出せないまま閉幕してしまったことがありました。こちらはイスラエルの核保有について、議論がまとまらなかったことが原因です。
がんじがらめになっているように思えますが、初めて尽くしの外相級会談だったことは間違いありません。核兵器のない世界は、今はまだ想像しにくいものですが、今回のような「初」を積み重ねて、だんだんと現状が変わっていくのではないか。そんな予感を抱かせてくれました。
参考:
12日付 読売新聞 朝刊 14版 関連紙面
同日付 朝日新聞 朝刊 13版 関連紙面
同日付 日本経済新聞 朝刊 13版 関連紙面