滅多に見せない笑顔と、大型旅客機300機のインパクト。ビジネスの話題とはいえ、米中の相互依存の強固さを改めて意識してしまいます。首脳会談のために米国を訪れた習近平国家主席は、マイクロソフト社やボーイング社の工場を視察。実利を重視した外交で、米中経済協力をアピールしました。直後に首脳会談を控えていることもあり、緊張の緩和に努めているようです。
そもそも緊張を起こす最大の要因は、中国政府が関与したとみられるサイバー攻撃です。ライス米大統領補佐官は、会談直前の23日に「米国にとっては経済上かつ国家安全保障上の概念で、2国間関係に非常に大きな緊張を引き起こしている」と語りました。会談を優位に進めようと、直前に様々な工作を行うのは首脳会談においてはよくあることです。そんな中「経済上」と言ったのは、問題のサイバー攻撃が米の企業に対して行われていたことが分かったからです。つまり頼みの綱である経済面のつながりも、決して順風満帆というわけではないということ。他にも今夏の株価暴落など、市場の透明性についても懸念があります。
「経済外交」「爆買い外交」と評されるように、中国の発言力は経済分野にその多くを依存しています。しかし、それだけで米中関係の吉凶を占うことはできるのでしょうか。経済的交流を捨ててまで米中が衝突することはないとする論がある一方、通商に用いる海路を守るため強硬手段をも辞さないだろうという論もあり、どちらも説得力があります。
写真に登場する習近平国家主席は、満足そうな笑顔で旅客機を見上げています。私はそれを見て、今年4月のバンドン会議で行われた日米首脳会談の写真を思い出してしまいました。仏頂面で終わるよりも、多少はナショナリズムの高まりを抑えたことでしょう。たとえほとんどパフォーマンスであったとしても、両国首脳が笑顔で会談を終えられるのは外交努力の成果ではないでしょうか。続いて行われる米中首脳会談も、和やかな雰囲気で終わってくれることを願います。
2015年9月25日 読売新聞朝刊『習氏 米で「爆買い」外交』
2015年9月23日 読売新聞朝刊『中国サイバー攻撃 米追及へ』