「性犯罪における親告罪規定」被害者を救う制度は社会悪をも排除する

強姦罪や強制わいせつ罪のような性犯罪が、どのように起訴されているかご存知でしょうか。いま現行法制度の見直しが議論されています。性犯罪を罰する法律の見直しを議論してきた法務省の有識者検討会議は10日、性犯罪の起訴に被害者の告訴を条件とする「親告罪」規定の撤廃や法定刑引き上げについて、刑法改正が必要だとする報告書案を公表しました。上川法務大臣はこの報告書を受け、早ければ今秋の法制審議会に親告罪撤廃などを諮問する見通しです。

ここまで読んできて、皆さんはどのように感じたでしょうか。私は率直に、「親告罪ってなんですか」と思ってしまいました。普段から法律に接していなければ、なかなか聞かない言葉ではないでしょうか。さきほど「起訴に被害者の告訴を条件とする」と書きました。事件に関して検察がどんなに裁判に持ち込みたくても、被害者に加害者を訴える意思がなければ起訴できない犯罪ということです。警察に相談したり、公開の法廷で審理されたりすることで被害が明るみに出てしまい、保護されるべき被害者のプライバシーが守られなくなってしまうという事態を防ぐ目的があるようです。

しかしながら、この制度は逆に被害者に告訴の負担をかけ、被害の潜在化を進めていたという側面があります。図らずも「泣き寝入り」を助長しかねません。このため、今回の検討会議は制度の撤廃を促したようです。

この流れを歓迎すると同時に、私はさらなる効果に期待しています。それは「示談」の抑制です。この記事を書くにあたり、親告罪の場合に加害者はどのような対応をとるのか気になり、いくつかインターネットで調べてみました。すると、ホームページを出しているどの法律事務所も、薦めるのは示談ばかり。現行の法制度では、親告される前に示談金を支払って被害者側と示談することが最善だというのです。確かに、起訴されるより示談に持ち込む方が、犯罪が明るみに出にくくなるため加害者側としてはメリットがある判断です。しかし、それで事件が解決したと言えるはずがありません。加害者に刑罰を与えるということは、健全な社会を維持するための抑止力としても必要なことだと思います。これまで社会にはびこってきた示談を助長する制度が、今回の刑法見直しで撤廃されようとしています。ぜひ皆さんにもこの改革に注目して、新聞を読んでみてください。

参考記事

11日付讀賣新聞朝刊(東京13版)1面「性犯罪『親告罪』撤廃促す」

同2面「性犯罪 泣き寝入り防ぐ」

同17面「性犯罪の被害者 どう支援?」

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