突然ですが、「死にたい」「自殺したい」と思ったことはありませんか? ほとんどの人が一度は思ったことがあるかもしれません。私もその一人で、原因は学校で日々繰り返されたクラスメートからのいじめでした。そういった地獄のような人生から解放されるならいっそのこと、死んで楽になろうと思ったことは何度もありました。
22日に内閣府が発表した2015年版の「自殺対策白書」によれば、国内の自殺者は03年の3万4427人をピークに減少傾向にあり、14年は前年比1856人減の2万5427人となりました。このうち40歳未満の若年層は6635人で全体の26.1%を占めます。気になるのは、全体では減少傾向にあるものの、若者の自殺者数の減り方が鈍いことです。若年層では、他の年代に比べて、仕事の失敗や職場の人間関係、更には漠然とした将来への不安などが自殺につながる割合が高いことが分かりました。
この記事を読んで、以前テレビで観た人気ドラマ『相棒』の一作「ボーダーライン」を思い出しました。そこでは、一人の社会人が仕事に就けず、結婚も出来ず、犯罪に手を染めた挙句、住んでいた部屋を追い出されてホームレス生活に転落。ついには自分の手を切ってビルの屋上から飛び降りてしまいます。この先、自分に限らず誰にでも起こりそうな出来事が散りばめられ、非常に重く、そして人生について考えさせられる内容でした。
私は、こうした自殺を取り上げた作品を見たり読んだりすることで人生に向き合いました。さらに相談役になってくれる仲の良い友達や叔父さんに悩みを聞いてもらったり、Yahoo知恵袋に悩みを打ち明け、親身のアドバイスに勇気付けられたりするうちに自殺願望は薄れていきました。今になってみると、周りには手を差し伸べてくれる人たちがたくさんいたことが分かります。さらに小説家になりたいという希望を持ったことで、夢に向かって「頑張って生きよう」と思うようになりました。
世の中には、以前の私のように助けを求める人たちがたくさんいます。だからこそ、自殺対策の知識を持つ人たち、すなわち「ゲートキーパー」がそういった人々の悩みや心の問題にいち早く気付いて耳を傾ける必要があります。インターネットなども活用した無料相談窓口を開設するといった取り組みもいっそう重要になってくると思います。
私も苦い体験を生かしてアドバイスするなど、自分なりに自殺志願者を少しでも減らしていきたいと考えています。そしていつの日か、この世から「自殺」という言葉が無くなればいいと強く願っています。
6月25日付 朝日新聞朝刊(生活13版)33面 「同世代の自殺 防ぎたい」