「宇宙飛行士になりたい!」男の子ならば一度は憧れる宇宙飛行士。スポーツ選手や運転手と並んで、安定した人気です。筆者も小さい頃は宇宙への憧れを抱き、食い入るように写真が満載された宇宙図鑑を読んでいました。
文部科学省の担当者は、「月は火星探査へ向けたステップアップだ」と話しています。今宇宙飛行士を夢見ている子供たちは、将来は火星で活躍しているのかもしれません。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、月面着陸を目指す無人探査機を2018年度にも打ち上げる計画を発表しました。アポロ11号が月面に降り立ってから約半世紀、今回の探査機が目指すのは「ピンポイント着陸」です。これまでの探査機は、着陸地点が1km以上ずれるのは当たり前でした。アポロ11号は目標から8kmも離れた場所に着陸しています。誤差が100m以内という正確な着陸ができれば、月に火星探査のための拠点を建設できる。壮大な計画に胸が躍ります。
長い間、宇宙に関わる分野で活躍できるのは理系の学生ばかりだと思っていましたが、果たしてそうではありません。一口に宇宙開発といっても、求められている人材は様々です。例えば法整備の分野では、JAXAの協賛の下、毎年学生を募って「宇宙法模擬裁判」が行われています。私が参加したときのテーマは”Case Concerning Satellite Electromagnetic Interference”、つまり「衛星の電磁干渉に関する案件」でした。A国の打ち上げた人工衛星が、B国の打ち上げた人工衛星の妨害電波によって墜落してしまうというシチュエーションです。地球上の国際法ではカバーしきれない問題が多く、最新分野であるため専門家の数も足りていません。
宇宙開発は外交・安全保障の視点からも注目されてきました。冷戦期には、主として情報収集のための偵察衛星が開発され、利用されてきました。レーガン政権時代のSDI構想、通称「スターウォーズ計画」はあまりにも有名です。しかし、政治や経済が宇宙空間にまでその領域を広げている中、活躍できるのは何も宇宙飛行士や科学者ばかりではないはずです。「自分は数字に弱いから」と思考停止してしまうのはもったいない。むしろ期待される人材かもしれません。
参考記事:29日付 日本経済新聞朝刊 (東京13版)31面 (ニュースな科学)「月面探査 日本が挑む理由」