再稼働の行方 新潟県柏崎市を歩いてみた

 新潟県といえば、米どころ。へぎそば、笹団子、日本酒も美味しい。そんな新潟県で先月に行われた県知事選では、米山隆一氏が当選しました。大きな争点は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働について。 この原発は全7基が停止しており、原子力規制委員会が適合審査中です。米山氏が当選し、再稼働に慎重姿勢をとる知事の誕生となりました。

 20日には、柏崎刈羽原発のある柏崎市で市長選がありました。原発再稼働を条件付きで容認する元市議・桜井雅浩氏が、再稼働に反対する元市職員・竹内英子氏を破り、初当選を果たしました。県知事選でも、柏崎市内での得票数で米山氏は約3千票の差をつけられています。やはり地元では原発を受け入れる人が多いのでしょう。

 実際に、私も11月上旬に柏崎市に行きました。不安だが、このまま運転中止だと生活が苦しいという地域の実情がうかがえます。原発で働く人が利用するのでしょうか。駅前には古びた三つのホテル。「稼働していなくても危険なのでしょ。そうならば再稼働しても同じこと。動かしてもいいのではないか」。海のある方角を見つめながら、タクシーの運転手はそう話してくれました。居酒屋の店主や商店街の人たちも、町の活性化のために原発の再稼動に期待を寄せていました。

 一方で、2007年の中越沖地震を振り返り、現時点では長期的な避難計画が整っていないことに不安を抱く声も聞きます。中越沖地震の時に施設で火災が起きています。東日本大震災での福島原発のことも脳裏をかすめるのでしょう。「不安だけど、夫は原発関係で働いているから簡単に反対とも言えないのよ」。海沿いに住む50代の女性はそう言いました。事故が起こってしまってからでは遅いのです。新市長には住民が抱く懸念を解消するという重要な責務に早急に取り掛かる必要があります。

 新潟日報によると、市長選の出口調査で有権者が挙げた政策の優先順位は次のようなものでした。原発への対応が27.3%とトップです。それに次ぐ25.8%が景気・雇用対策を挙げています。太陽光や風力など再生可能エネルギーの本格的に普及するまでには課題は山積みです。

 県と立地地域で再稼働に対する立場が分かれる結果になったことで、国内の再稼働が進むなか、市長と知事が原発についてどのような論戦を展開するのか。しっかりと注目したいものです。

IMG_柏崎刈羽原発俯瞰遠くに見えるのが柏崎刈羽原発(11月上旬 筆者撮影)

参考記事
21日付け朝日新聞 東京14版 38面「再稼働条件つき容認派当選」
21日付け読売新聞 東京14版 32面「柏崎市長に再稼働容認派」

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