台湾人と日本人が手話でつながる ろう映画監督の思い

先月23日は「手話の日・手話言語の国際デー」で、都庁では障害理解の啓発イベントが開かれました。都民ホールでは、ろう者の映画監督である今井ミカさん(37)のトークライブが開かれ、多くの聴者やろう者が話に向き合っていました。

都民広場での野外ブース(9月23日、筆者撮影)

群馬県出身の今井さんは、第一言語が日本手話のろう者です。ろう学校卒業後、大学で映像制作を学び、短編・長編映画の制作に取り組んでいます。昨年の最新作「黄色い子」は第38回東京国際映画祭「アジアの未来」部門に選出されました。

「黄色い子」の舞台は台湾・台北。旅行中に迷子になった日本人のろう児と現地のろう者チェンが出会う物語です。迷子の父親が異国で息子を探すなか、チェンは日本統治時代の名残である日本手話を頼りに親の手がかりを探っていきます。

手話は世界共通言語ではありません。しかし、大戦の影響で台湾の高齢者が使う手話の6割は日本手話由来で、若者でも4割ほどが似ているといいます。予告編ではろう児が迷子になった際、地元警察に引き渡そうとするシーンがありますが、ろう児は現地警察を怖がりチェンから離れません。言葉が通じないことに不安があるからでしょう。台湾には日本語を話せる人もいると思いますが、類似性のある台湾手話の方がコミュニケーションに安心感があると思われます。作品では、英語と日本語が異なるように日本語と日本手話も異なる言語であることが強調されています。

今井さんが大切にしていることは聴者とろう者が一緒に楽しめる映画を制作すること。ろう者だけで映画を作るとろう者だけのものになります。企画の段階から聴者とろう者が一緒に話し合い、手話で脚本も作りました。手話は情景を見えたままに映し出すことができます。そのため、動きのある背景と大きな手話表見が重ならないように工夫も施されているといいます。どんな映像に仕上がったのか。「黄色い子」の一般劇場での公開を楽しみに待ちたいと思います。

手話普及のシンボルカラーである青色にライトアップされた隅田川駒形橋(9月23日、筆者撮影)

異国で迷子になった状況は災害時とも似ているように感じました。ろう者は地震発生時の騒音や警報、避難所での配給の合図が聞こえません。筆談や音声文字変換アプリを活用すべきです。地域一体となった避難訓練を多くの自治体で進める必要があるでしょう。

多くのことを考えさせてくれる作品と言えます。