韓国の統一地方選で、ソウルを含む全国91か所の投票所で投票用紙の不足が発生しました。中央選挙管理委員会によれば、足りなくなった投票用紙は合計7194枚に上ります。その結果、26か所の投票所では投票が一時中断される事態となりました。特にソウル市松坡区では投票待ちの長い行列が発生し、数時間待ったにもかかわらず投票できなかったという声も報告されています。地元選管は実際に何人が投票を断念したのか把握できていないと説明しており、問題の全容は依然として明らかになっていません。
今回の事態の背景には、投票用紙の準備基準の変更がありました。中央選管は各地の選管に対し、投票用紙の印刷枚数を有権者数の50%以上とする指針を示していました。これまでの地方選では60%、大統領選では70%を下限としていたため、異例の低水準だったといえます。前回選挙で投票用紙が余ったうえ、余剰の投票用紙が不正選挙につながるという一部保守団体の主張を考慮した結果だと説明されています。しかし結果として、投票率が想定を上回り、多くの投票所で投票用紙が不足する事態を招きました。
問題発覚後、中央選管は外部有識者らによる真相究明委員会を設置し、原因の洗い出しに乗り出しました。また、李在明政権も検察や警察にも徹底調査を指示しています。しかし、市民の怒りは収まっていません。ソウルでは選挙のやり直しを求める集会が連日開かれ、一部では数万人規模の参加者が集まったと報じられています。韓国では1987年の民主化運動を経て現在の民主主義が築かれた歴史があり、参政権に対する市民の意識は非常に高いものがあります。そのため、今回の問題は単なる事務的ミスではなく、「民主主義そのものへの挑戦」と受け止める人も少なくありません。
筆者自身、現代の選挙で投票用紙が不足し、有権者が投票できなかったという事実を最初は信じることができませんでした。選挙は民主主義を支える最も重要な制度の一つであり、行政サービスの中でも正確性が最優先されるべき分野だと思います。投票率を予測することが難しいとしても、有権者が投票できなくなる事態だけは絶対に避けなければなりません。ましてや近年、韓国社会では不正選挙をめぐる疑惑や陰謀論がたびたび取り上げられており、選管にはこれまで以上に慎重な運営が求められていました。
一方で、今回の問題を役所の不手際として終わらせてはならないとも感じます。選管は行政権から独立した機関ですが、だからこそ強い責任感と透明性が求められます。政府や国会は調査を徹底し、責任の所在を明確にするとともに、今後同様の問題が起こらない態勢を整える必要があります。
民主主義は国民の信頼によって成り立つものです。選挙への信認を回復し、市民が安心して一票を投じられる環境を再び築くことが、今の韓国社会に求められています。
読売新聞オンライン、2026年6月17日、「韓国統一選 投票用紙 各地で不足…やり直し求め市民デモ」