東京駅から真っ直ぐ徒歩約10分。皇居の外周は温かい風に包まれ、多くの人が走る姿が見えます。運動が苦手な筆者は途切れることなくランナーの姿が目に入ってくることに驚きました。
“皇居ラン”のはじまり
朝日新聞クロスサーチで「皇居ランナー」を検索したところ、この言葉が初めて新聞に掲載されたのは2003年(あくまでも筆者調べ)。ランニングとその後の銭湯に集まる人々の姿が夕刊に掲載されています。
08年には前年から開催されている東京マラソンをきっかけに皇居周辺でジョギングをする人が増えたと報じられています。東京マラソンは制限時間が長く、ゆっくり楽しんで走ることができることから参加者が増加しました。
その後、皇居ランは一つのコミュニティとして形成されていきます。信号が無く、1周5キロと分かりやすい場所で他の人と一緒に走る連帯感に加え、チームスポーツではないことによる他者との適度な距離感が魅力、と08年の朝日新聞において述べられています。
皇居のそばにある椅子で休憩をしていた若い男性に声をかけると、快く質問に答えてくれました。
走り始めたきっかけはInstagramなどのSNSで知ったトレンドと自身の健康意識が一致したこと。周辺の企業で働く人が多く、走った距離が分かりやすいことが皇居で走る人の多い理由だそうです。男性は同僚3人と月に2回ぐらいの頻度で走っているそうで、5kmは運動に慣れている人には走りやすい距離だと教えてくれました。
皇居外苑にはここで走る人に向けた施設も多くできています。ロッカーやシャワー、タオルのレンタルまでしているところも多く、仕事帰りにそのまま走りに行きたいというニーズに応えています。
増えたことで生まれた批判
ランナーが増えたことで摩擦も生まれています。
ランナーが走る場所は普通の歩道。集団で走ると歩行者の通行を妨げてしまうことがあります。実際、歩行者とぶつかることもあり、批判が集まるようになりました。
こうした状況を受け、東京都千代田区が「皇居周辺歩道利用マナー」を定めています。
①歩道は歩行者優先、②タイムよりゆとり、③歩道をふさがない、④ながら通行は控える、⑤狭いところは一列に、⑥自転車はすぐに止まれるスピードで、⑦周回は反時計回り、⑧ゴミは必ず持ち帰る、⑨思いやりの心で、の9項目です。
このマナーは日本語のみならず、英語、中国語、韓国語にも翻訳されており、今では海外から訪れる人も皇居周辺を走っていることが分かります。そして、多くの人はこのマナーを守っているように感じられました。
その他、皇居外苑においての団体利用に関しても千代田区主催の「公共空間活用検討会(皇居周辺地域委員会)」によって地域ルールが定められており、時間や人数などの制限に従って申請する必要があります。
しかし、それでもトラブルは起きます。26年10月2日の読売新聞では、皇居ランのマナー調査を行うという記事が掲載されています。一部のランナーがマナーを守らないため、歩行者が気持ちよく歩道を利用できない現状があり、区が実態を調査するというのです。
筆者が歩いている時、マナーの悪さを感じることはありませんでした。しかし、歩行者もランナーも多かったことから、ルールが無かったら危険だろうな、と感じる場面はありました。誰もが気持ちよく公共の場所を使うことが出来るように、利用者の多くがルールを理解することが求められています。
京都市内であれば、鴨川の土手でランニングやサイクリングをしている人の姿をよく見かけます。このように、日本各地で走ることを楽しむコミュニティがあるのではないでしょうか。
【参考資料】
2003年9月30日付 朝日新聞(東京)夕刊1面 「銭湯で変身、走ってひと風呂 東京・千代田区の皇居周辺」
2008年2月16日付 朝日新聞朝刊(東京)3面 「「走る人々」増えてます 東京マラソンで印象変わる」
2011年1月22日付 朝日新聞朝刊(東京西部)29面 「「皇居ラン」にルールを」
2026年10月2日付 読売新聞朝刊(東京・都民)25面 「「皇居ラン」 マナー調査へ」

