9月に渡米した際、筆者は荷物の紛失、「ロストバゲージ」に遭遇しました。ニューヨーク・ラガーディア空港からシカゴを経由し、ミルウォーキーへ向かったときのことです。今回はその体験と私たち乗客が講じれる対策について考えます。
出発準備中の最新鋭機737 MAX 8
(ラガーディア空港、2026年9月筆者撮影)
最終目的地のバゲージクレーム(手荷物受取所)で、待てど暮らせど荷物は出てきません。しまいには別の便の荷物が流れてきました。航空会社スタッフに事情を説明すると、「スーツケースの特徴」や「中身は何か」などを確認された後、荷物が見つかった場合「空港まで引き取りに来るか、配達するか」を選ぶように言われました。筆者は配達を依頼し、「次便で運ぶよう手配した」との回答を得て、空港を後にしました。
※画像の一部を加工しています
手元に着替えがなかったため、衣類を買い足すことも検討しました。こうした出費は海外旅行保険でカバーできる場合もあり、筆者が加入していた保険でも、衣類や生活必需品の購入費として最大10万円まで補償される契約でした。しかし、申請手続きの煩雑さから諦めることにしました。せっかくなら現地でしか手に入らない服を買ってもよかったのかもしれませんが、預けたスーツケースが届けばその分荷物が増えてしまいます。「なるべく身軽でいたい」という判断もあり、購入は断念しました。
しばらくしてネット上のレポートを追跡してみると、荷物が空港に着いたことが分かりました。配送業者に引き渡されたものの、「いつ配達されるか」までは分かりません。他にも同じような荷物を配達しているようで、随時トラックの位置情報が更新されていきます。夜も遅くなり、「今日はもう無理だろう」と諦めて就寝したところ、深夜のうちに配達されていました。迅速な対応には感謝です。
なぜ、ロストバゲージが起きてしまったのでしょうか。原因としてまず考えられるのは、乗り継ぎ前の便の遅れです。予定通りに出発したものの、シカゴ周辺の雷雨が想定より長引いたため、着陸後に滑走路の手前で1時間待機することになりました。
ユナイテッド航空の国内線チェックインカウンター
(ラガーディア空港、2026年9月筆者撮影)
その結果、当初予定していた乗り継ぎができず、後の便に変更したことで荷物が迷子になった可能性があります。経由地のシカゴでフライトの変更手続きをした際に、「荷物は大丈夫か」と確かめました。「チケットと荷物の情報は紐付いているため、手続きの必要はない」との回答を得たのですが、そうはいなかったのかもしれません。
日本とは異なる制度
アメリカでは、通常のサービスが受けられるFSC(フルサービスキャリア)であっても低価格のLCCと同じように、手荷物を預けるのは有料です。筆者は6,900円を払いました。有料であることやロストバゲージへの懸念からか、機内の収納棚は搭乗後すぐに埋まり、争奪戦のような状況でした。
今回のロストバゲージの確たる原因を辿ることはできませんでしたが、ここからは、私たち乗客ができる対策を6つ挙げます。
①AirTagやトラッカーの活用
荷物に入れておくことで位置情報を特定でき、紛失時の不安軽減につながります。オンライン上では、便利な機能もありました。手荷物の居場所を伝えてくれるのです。状況が変わり次第すぐに更新されます。
手荷物の居場所を表示する画面
状況が変わり次第すぐに更新される
※画像の一部を加工しています
②過去のバーコードシールを剥がしておく
以前のフライトの古いシールが残っていると、空港の仕分けシステムが誤認する原因となるため、事前にすべて剥がしておきます。バーコードをうまく読み取れないと、手作業で対応しなければならず、ミスが起きる余地が生まれます。
③数日分の荷物の機内に持ち込む
1、2泊分の着替えなど当座に必要なものを詰めたバッグを機内に持ちこんでおくと、現地で衣服を調達する手間が省け、スケジュールへの影響を最小限に抑えられます。
④早朝便を利用する
機材がすでに出発空港に待機しているため、予定通りフライトが進みやすい。また、万が一遅れても、当日中の他フライトで届く確率が上がります。
⑤特徴的な目印を
筆者はスーツケースの持ち手に日本のバンダナをつけています。視認性が高まるほか、他者による取り間違いも防止できます。
荷物が届かない可能性を踏まえた対策
現地在住の日本人によると、子どものスポーツの遠征時にバットなどの用具を紛失すると試合自体が成り立たないため、「移動手段を飛行機から車へ変更した」とのことです。米国は広く移動に1、2泊を要する場合もあり身体的負担が大きいものの、荷物を確実に運べる安心感があります。確実性が求められる場面において、航空機の速さが活かせない現状は残念に思います。
ロストバゲージの代償は乗客に?
国際航空情報通信機構(SITA)の調査によると、2023年に紛失や遅延などに見舞われた荷物は、約3,610万個に達しています。1,000人あたり6.9個と、決して低くない確率で発生していることが伺えます。乗客への補償やデリバリー費用は決して安くはありません。筆者の口座にも受託手荷物代として支払った6,900円が返金されていました。行方不明になった荷物1個につき、260ドルのコストがかかっているとの試算もあります。
こうしたトラブル対応のコストは運賃に上乗せされるため、航空券の値上がりという形で、結局は私たち乗客が代償を払うことになります。実際、今回筆者が利用したフライトも、片道の国内線にもかかわらず5万円を超える価格で販売されており、すでに運賃は高騰していました。
2002年の朝日新聞『天声人語』では、手荷物の迷子防止策を巡り、欧米各国との開発競争になっていると報じられていました。それから20年以上が経った現在も根本的な解決には至っておらず、対策はいまだ発展途上にあると感じます。
AIを活用すればロストバゲージを軽減できそうですが、荷物の数が膨大すぎて投資額が膨大となるために導入が進んでいない事情もあるのかもしれません。とはいえ、旅行にはアクシデントがつきものです。起きてしまった時は私たちも受け入れながら、臨機応変に対応していくことが求められます。
シカゴ・オヘア→ミルウォーキー線として
到着した飛行機
(ウィスコンシン州ミルウォーキー空港、2026年9月筆者撮影)
【参考記事】
2002年6月3日、朝日新聞、「迷子予防策で整理札をIT化 航空便の手荷物(天声人語)」
2024年4月22日、日経電子版、「関西国際空港、開業30年間「荷物紛失ゼロ」 世界が評価」
【参考HP】
SITA公式HP、”For the aviation industry, it’s $6.3bn when it goes wrong”




