少年法は本当に「甘い」のか 子どもの権利条約から考える少年法の目的

子どもが罪を犯した場合、スウェーデンでは早ければ13歳から刑務所に入ることになるかもしれません。刑事責任年齢を15歳から13歳へと引き下げる改正案が、今月中に採決される予定です。背景には、子どもが関わる銃撃事件や爆破事件といった凶悪犯罪の増加があります。

日本においても、少年犯罪に対する厳罰化を求める声が高まっています。未成年者による凶悪犯罪が報じられるたび、SNS上などではそうした意見が飛び交います。罪を犯した少年はすべて、刑法のもとで裁かれるべきなのでしょうか。そもそも、少年法はなぜ存在しているのでしょう。

 

■少年法の対象と制度

子どもの権利条約における「子ども」の定義は「18歳未満のすべての者」です。これに対し、日本の少年法における「少年」とは「20歳に満たない者」をいい、刑法に規定される刑事責任年齢は14歳となっています。

(筆者作成)

14歳以上20歳未満の少年が事件を起こした場合、警察や検察は原則として少年を家庭裁判所に送致します。家裁は生い立ちや家庭環境を調べ、少年院での矯正教育や保護観察などで更生を図る「保護処分」にするか、「検察官送致(逆送)」するかなどを決めます。

(引用:2025年5月27日付 朝日新聞デジタル 「少年の重大事件、家裁の逆送が焦点 千葉の刺殺事件で15歳鑑定留置」)

「逆送」となるのは、保護が適さなかったり、保護による矯正・改善の見込みがなかったりするなど「刑事処分相当性」が認められる場合です。少年の年齢が20歳を超えた場合も同様です。逆送となると、20歳以上の者と同じように公開の刑事裁判を受けることになります。

少年の刑事手続きは、成人とまったく同様に進められるわけではありません。死刑が妥当と判断される事件に関しては無期懲役が、無期懲役に関しては10年以上20年以下の拘禁刑が科されるなど、刑の上限が引き下げられます。さらに、20歳以上が犯した事件においては「懲役〇年」といった有期刑が言い渡されますが、少年は「長期〇年、短期〇年」と幅を利かせた期間の拘禁刑が科されることもあります。他にも、少年刑務所における分離拘禁や仮釈放などの特則が存在します。

しかし、すべての少年がこのような特則の対象となるわけではありません。2022年4月1日、選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、少年法は大きく改正されました。これにより新たに設けられたのが、18・19歳の「特定少年」制度です。

特定少年は、18歳未満の少年と同様に少年法が適用されます。家庭裁判所に送致され、そこで処分が下される点は変わりません。しかしほとんどの場合、保護処分ではなく、逆送となります。これは、規定される犯罪行為について原則として逆送の処分が下される「原則逆送対象事件」が、特定少年に限り大幅に拡大されたことによります。さらに、逆送決定後は20歳以上と同等に取り扱われるようになり、前述の懲役刑上限規定は適用されません。また、少年の犯した事件については、犯人の実名や顔写真を使った報道は禁止されていますが、特定少年のときに犯した事件については解禁されます。

 

■少年事件の動向

1948年に制定された現行少年法は、2000年に入ってから大きな改正を繰り返してきました。1990年代後半、少年による凄惨な事件が大々的に報道されることが増え、「少年法は甘い」との主張が広まったことが背景にあります。現在も未成年者による凶悪犯罪が報じられるたび、少年事件の増加を憂い、厳罰化を求める主張がSNS上などで見られます。

栃木県で5月に発生した強盗殺人事件では、実行犯として16歳の少年3人が逮捕されました。福岡市の商業施設で2020年、当時15歳の元少年が面識のない女性を包丁で複数回刺して殺害したという事件も発生しています。千葉市の路上で25年、当時15歳の少年が近くに住む84歳の女性を刺殺したという事件もありました。少年による凶悪事件は、定期的に発生しているように思われます。しかし、このような事件は本当に増えているのでしょうか。

法務省の調査によると、少年犯罪はここ数年微増しているものの、全体としては減少傾向にあります。

(筆者作成 参考:「令和7年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/1検挙人員」)

少年事件は大幅に増えているわけではないのです。SNS上などでみられる「少年事件が増加している」や「治安は悪化している」といった言説は、少年による凶悪事件が大々的に報じられたことによるのかもしれません。

 

■少年法の目的

ここで、少年法の目的を確認しましょう。少年法は第1条に、その目的を掲げています。

少年法 第1条(この法律の目的)

この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

 

少年審判には司法的機能と福祉的機能があるといわれていますが、福祉的機能の視点からの少年法の目的は、非行に陥った少年の再非行を防止し、社会に復帰させることです。

子どもの権利条約をはじめとする国際人権法は、さらに進んだ見解を示しています。社会的危険が子どもの成長に悪影響を及ぼし、それが非行の原因になっているという認識を新たにすることを求めているのです。

 

■少年法はどうあるべきか

スウェーデンでは、刑事責任年齢が引き下げられようとしています。日本においても、厳罰化を求める意見がみられます。子どもが関わる凶悪事件への抑止という考えから、このような意見を持つことは確かに自然です。しかし、自らの力ではどうしようもない要因によって非行に走らざるを得なかった子どももいます。そのような非行の原因を無くすことこそが、凶悪事件を防ぎながら社会の福祉と安全を維持することにもつながるはずです。

犯してしまった罪に向き合わせながら、適切な処分が下される制度と状況をつくりだすことは、社会が抱える重い課題なのではないでしょうか。少年法や子どもの権利条約の目的を振り返るときです。

 

参考記事:

・2026年3月25日付 朝日新聞デジタル 「15歳の殺人、二審は『母親の責任』認め賠償命じる 遺族が逆転勝訴」

https://digital.asahi.com/articles/ASV3T1QTJV3TTIPE00SM.html

・2025年5月27日付 朝日新聞デジタル 「少年の重大事件、家裁の逆送が焦点 千葉の刺殺事件で15歳鑑定留置」

https://digital.asahi.com/articles/AST5W1QHRT5WUDCB013M.html

 

参考資料:

・ANN News CH 「刑事責任年齢を15歳から13歳に引き下げる法案を月内採決 スウェーデン国会【知っておきたい!】【グッド!モーニング】【2026年6月7日】」

https://youtu.be/dYVZuJFXsMw?si=afebcpO6DBKFshFn

・法務省 「令和7年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/1検挙人員」

https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_3_1_1_1.html

・法務省 「少年法が変わります!」

https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00015.html

・法務省 「少年非行の動向と非行少年の処遇」

https://www.moj.go.jp/content/001432735.pdf

・外務省 「『児童の権利に関する条約』全文」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

・e-gov 法令検索 少年法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000168

(最終閲覧はすべて2026年6月8日)