夏やちゃけん対馬にくるっちゃ!

題名から何事かと思った皆さん、誠に申し訳ございません。

筆者が愛してやまない、地元対馬の方言で「夏だから対馬においで」と書きました。対馬方言の語尾は「~ちゃ・やちゃ・ち」。福岡出身の友人に「まるでうる星やつらのラムちゃんだね」と言われ衝撃的だったのを思いだします。他にも面白くないことを「さえん」、頑固者を「こっぽうもん」、お前は「おし」と言います。

筆者は城下町の厳原で育ちましたが、地区ごとで方言も異なるのでいまだにわからない言葉もあります。方言とは異なりますが、学校で先輩のことを「○○兄(にい)」「○○姉(ねえ)」と呼ぶのは温かみがあってお気に入りです。

序盤から地元愛のあふれる話をしてしまいました。というのも、一昨日、昨日と港まつり、正式には「対馬厳原港まつり」が開催されたため、いつも以上に地元のことを考えてしまうのです。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の港まつりは注目を集めました。ここ数か月の日韓関係の悪化を受けてのことです。

筆者は韓国留学中のため現地に行くことが出来ませんでした。しかし、対馬で生活していた当時は友人と遊びに行ったり、祖母たちが出す店の手伝いをしたりしていました。そのため思い出の詰まった大事なお祭りなのです。

とくに今年は朝鮮通信使の復元船の来航が予定されていました。しかし「現在の日韓情勢を受け、船の運航が困難になった」と韓国の団体から連絡が。朝鮮通信使自体もなくなるかもしれないと危惧されていましたが、そこは何とか踏みとどまりました。釜山の人々も苦渋の決断だったのでしょう。一市民として感謝してもし尽くせない思いです。

 

▲港まつりが開催されるまでの数週間、対馬では「対馬厳原港まつり」と書かれた旗を見ることができる。

この旗が夏到来の合図だ。8月3日、対馬にて筆者の母親が撮影。

 

昨日は新聞社やNHKから多くの記事が流れました。以下、抜粋です。

―対馬藩主に扮した陸上自衛隊対馬駐屯地の山口勝司令が「今後も『平和の遺産』である朝鮮通信使の『誠信交隣』の精神を世界に広げていきましょう」と読み上げると、通信使の正使役の南松祐(ナムソンウ)・釜慶(プギョン)大名誉教授が「皆さまに釜山市民の真の友情をお伝えするよう、うかがいました。民間の文化交流をさらに活性化し、日韓の葛藤解決の糸口を作ることが大事」と応じた。(朝日新聞:「『釜山市民の真の友情を伝えに来た』今年も共に通信使行列」) 

―対馬市の比田勝尚喜市長は「国とは別に、私たちは自治体どうしや民間の交流は続けていくべきだと考えている。韓国と日本の間を結んだ平和の行進とも言える朝鮮通信使をことしも再現できることを喜ばしく思っている」と話していました。(NHK:「朝鮮通信使行列 日韓300人参加へ 『民間交流は続ける』」)

 

地理的に韓国に近い対馬は、歴史的に日韓の仲を取り持つ役割を担ってきました。江戸時代の朝鮮通信使もまた対馬藩の尽力により始まったとされています。後に柳川一件という国書を偽造したことによって藩主と家老が対立した事件がありますが、それでも対馬の人々に後悔はなかったでしょう。

先日の「オタクに国境はない」でも触れましたが、対馬藩の儒者・雨森芳洲は対朝鮮外交の指針書『交隣提醒(こうりんていせい)』で述べています。

朝鮮交接の儀は、第一に人情・事勢を知り候事、肝要にて候

互いに欺かず争わず、真実を以て交わり候を、誠信とは申し候

国によって風儀も嗜好も異なるので、日本側のモノサシだけで接しては必ず不都合が生じる。相手国の歴史、言葉、習慣、人情や作法などをよく理解し尊重して「誠信の交わり(まごころの外交)」をおこなうべきである、ということです。

しつこいようですが、日韓の多くの人にこの言葉を知ってほしいです。そして一度対馬に訪れてください。港まつりのニュースは民間交流が行われたと喜ばしく報道されました。

しかし、私の母親から聞いた話では、会場は例年に比べ閑散としていたようです。

 

 

 

▲対馬に帰省した際撮った写真。港まつりはこの港で開催される。

今年、筆者撮影。夕方に出航する船も美しい。

 

筆者がこの島で学んだことは人と接していると国籍なんて関係ないということです。近くに人がいれば、日本人であろうと韓国人であろうと挨拶をしました。対馬は「国境の島」として韓国人が多い島として知られています。しかし、筆者からすると対馬の良さを知ってくれれば、どこの人であろうと良いのです。歓迎します。

多くの人が対馬を訪れて、なぜ今年も朝鮮通信使を開催することができたのか肌で感じてほしいです。わが地元は歴史、美味しいごはん、美しい自然、そして人との触れ合いがあります。夏は浅茅湾でシーカヤック体験もできる。

 

さあ、夏やちゃけん対馬にくるっちゃ!

 

参考記事

○朝鮮通信使

8月4日朝日新聞 世界の歩き方「『釜山市民の真の友情を伝えに来た』今年も共に通信使行列」https://digital.asahi.com/articles/ASM8443M1M84TIPE00B.html?iref=pc_ss_date

8月4日読売新聞「韓国からの復元船は中止、『通信使』行列を再現」

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20190804-OYT1T50153/

8月4日NHK NEWS WEB 「朝鮮通信使行列 日韓300人参加へ 『民間交流は続ける』」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190804/k10012020931000.html

8月4日西日本新聞「日韓交流で関係改善願う 韓国側有志、釜山市長説得」

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/532765/

 

○民間交流・対馬関係

7月31日長崎新聞「日韓関係悪化 対馬観光直撃 国境の島 韓国人観光客が激減 収束見えず募る危機感」https://this.kiji.is/529120668250604641

7月31日西日本新聞「日韓融和へ九産大生がイベント企画 『冷え込む今こそ行動』」

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/531465/

8月1日毎日新聞「日韓関係悪化で交流事業中止相次ぐ 21道県で35件が中止、延期」

https://mainichi.jp/articles/20190801/k00/00m/010/258000c

8月2日毎日新聞「日韓交流中止相次ぐ 輸出規制で関係悪化『こんな時こそ』宮崎市は継続」https://mainichi.jp/articles/20190802/ddm/041/010/022000c

8月2日ソウル聯合ニュース「韓国文化体育相『韓日関係困難でも交流継続を』SNSで訴え」https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190802001200882