連続ドラマW「フェンス」から性暴力問題を考える

筆者は脚本家野木亜紀子さんの大ファンです。野木さんの作品はどれもおすすめしたいのですが、ここで紹介するのは最新作である連続ドラマW「フェンス」です。

この作品は、雑誌ライターのキー(松岡茉優さん)が、米兵による性的暴行事件の被害を訴えるブラックミックスの女性・桜(宮本エリアナさん)を取材するために沖縄を訪れたところから始まります。米軍犯罪捜査の厳しい現実や、桜の供述に不審点があること、桜の祖母が平和運動に参加していることなどを、事件を調べる中でキーは知ります。桜の証言に秘められた事実や、性暴力問題、沖縄の現実に目が離せません。

(参考:フェンス | WOWOWオンデマンドで見る

話を進めていくうちに、「フェンス」によって隔てられるものが明白になっていくのです。沖縄と米軍基地だけではなく、沖縄と日本、女性と男性、家と個人のように。取り上げられる社会問題が多いことで、自分なりの越えなければならない「フェンス」を知ることができます。

 

中でも今回は、性暴力問題について考えていきます。

「性犯罪は量刑が軽すぎる」

「この社会が正しくないから、被害者が名乗り出ることが難しい」

「この世界が間違ってるから、正しいことができないんだよ」

最終話でのキーの発言です。ここでの「正しいこと」とは、性被害を訴えられる環境を整え、加害者の刑を厳罰化すること。次の被害者を生まないことです。

 

強制わいせつなどの性的事件の被害者のうち、警察などに被害申告した人は14.3%にとどまっています。

(出典・参考:令和元年版 犯罪白書 第6編/第1章/第2節/2 (moj.go.jp)性的被害の申告14%、19年犯罪白書 DVなども低迷 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

(参考:令和元年版 犯罪白書 第6編/第1章/第2節/2 )

なぜ8割もの被害者は、被害を申告できないのでしょうか。理由の一つに、セカンドレイプ(二次被害)を恐れて、というものがあります。性暴力被害にあった後、配慮のない言葉をかけられるなど、周囲の人の対応によって傷つけられてしまうのです。

「たいしたことはない」

「ちゃんと断らなかったんじゃない?」

「被害を訴えるのは売名行為だ」

被害者がどんな服を着ていたとしても、男性だとしても、すぐに嫌だと言えなかったとしても、被害を訴えることは間違ったことではありません。なぜ、何度も被害者が苦しまなければならないのか。

 

「癒されなかった傷は残るんです。何十年経っても」

第4話での精神科医城間薫(新垣結衣さん)の発言です。被害を訴えなければ、救済を受けることも、傷を癒すこともできません。それなのに、簡単に被害を訴えられなくて、加害者が野放しにされて、被害者が再度苦しめられるなんて間違っています。

駄目なことを駄目だと声を上げることができ、被害者が救済され、加害者が適切な罰を受ける、そんな正しい社会へ。私たちがいかなる障害も乗り越えて実現すべき課題でしょう。

 

参考記事:

・2020年2月27日付 朝日新聞デジタル #MeTooを阻むもの 性被害者の二次被害を防ぐには:朝日新聞デジタル (asahi.com)

・10日付 西日本新聞夕刊 1面 「ジャニーズ性被害 直視を」

・25日付 朝日新聞デジタル 性被害とセカンドレイプ「心ズタズタに」 元ジャニーズJr.の告白:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

参考資料:

連続ドラマW フェンス | オリジナルドラマ | WOWOW

令和元年版 犯罪白書 第6編/第1章/第2節/2 (moj.go.jp)

令和元年版 犯罪白書 第6編/第1章/第2節/3 (moj.go.jp)

親や友人からのセカンドレイプ 性被害者の二次被害を防ぐためには – 性暴力を考える – NHK みんなでプラス