「ゆるベジ」をご存じでしょうか？
近年、世界では環境保全やアニマルウェルフェア（動物保全）の視点から、ベジタリアンやヴィーガンなど、肉を食べない、もしくは動物性食品を摂らないライフスタイルが流行しています。また、コロナ禍における在宅期間の長期化から、「コロナ太り」が増えました。その反動として、健康意識が高まり、ベジタリアン的な食生活を心掛ける人が少なくないそうです。
ただ、いきなり動物性食品のない生活を始めることは難しいと思います。そこで、現在注目されているのが、週に一回以上動物性食品を摂らない日を作り、ゆるくベジタリアン生活を始める「ゆるベジ」（フレキシタリアン）です。株式会社フレンバシーが行った調査によるとベジタリアンもしくはヴィーガンの割合は５．７％、フレキシタリアンの割合は１５．８％で、６．３人に1人が意識的に動物性食品をとらないよう心掛けています。
代替肉の存在もゆるベジの普及を助けています。大手外食チェーン「やよい軒」は6月14日から大豆ミートを使った定食の販売を開始しました。メニューは三種類あり、「大豆ミートの野菜炒め定食」「大豆ミートのしょうが焼定食」「大豆ミートのなす味噌と焼魚の定食」です。筆者は、しょうが焼定食を食べてみましたが、見た目は肉そっくりで、外見だけでは大豆と分からない出来栄えでした。味は若干肉と異なるものの、食べごたえは十分。ご飯がすすむ味付けで大変美味しくいただきました。大豆ミートのような肉代替食品は、低カロリーで高タンパクなど体に優しく、また、牧畜で発生する温室効果ガスが発生しないなどの点で注目されています。
「やよい軒」を運営する株式会社プレナスの広報担当者に取材しました。近年高まっている「健康的な食事をしつつ、満足感も満たしたい」というニーズに応えるために大豆ミートの定食を開発したそうです。やよい軒のメニューは完全なベジタリアン料理ではありませんが、肉を食べずとも普段と同じような食生活が楽しめる大豆ミートは、無理のないベジタリアン生活に貢献することでしょう。
「大豆ミートのしょうが焼定食」（株式会社プレナス提供）
大手コーヒーチェーン「スターバックス」は6月1日から植物のみで作られたフードメニューを拡充しました。このように、ヴィーガンやベジタリアンに対応した料理を提供する飲食店は着実に増えています。しかし、海外と比べて日本全体での普及はまだ十分とはいえません。例えば、カリフォルニアでは9割を超えるレストランがヴィーガン対応しているのに対し、東京では約700店舗に限られています（Vecipe調べ）。ヴィーガン店舗検索サイトを運営する「ベシピ（Vecipe）」代表の周澤旭（しゅう・たくきょく）さんに、日本でヴィーガンレストランが普及しづらい要因を伺いました。
日本でヴィーガン対応のレストランが普及しづらいのは、ノウハウが不足していることが理由だと考えます。一口にヴィーガンと言っても、白砂糖を食べない人もいれば（製糖過程で骨炭という動物の骨を使うため）、玉ねぎやにんにくなど五葷を食べない人もおり、非常に多様です。こうした知識を網羅するには相当なコストがかかります。かつて、ヴィーガンメニューにたまごが出されたことがありました。誤った知識で提供してしまうと、大きなバッシングを受けることになります。
一方、アメリカでは多民族多宗教なこともあり、コメディーで扱われるほどヴィーガンが社会に広く浸透しており、知識も普及しています。そのため、日本と比べて出店の際のハードルは低くなっています。日本で、ヴィーガンに対する知識を普及させるには、おいしいや楽しいなどポジティブな面を示すことが重要です。アメリカのような動物愛護などの思想面を押し出した普及は,日本では難しいと思います。
Vecipeが開催したイベントの様子 (Vecipe 提供)
ヴィーガン料理のおいしいや楽しいを伝える活動をしている
ベジタリアンやヴィーガンと聞くと、動物愛護という理念が先行しがちです。もちろん、動物を大切にする姿勢は大切でしょう。ただ、まずは健康管理から始めてはいかがでしょうか。特に一人暮らしの大学生にとって、健康的な食事は大きな悩みの種です。筆者も一人暮らしで大学に通っていますが、不摂生な食生活がたたり、この一年間で体重が8㎏以上も増えてしまいました。まずは週に一回、大豆ミートなどを活用し、肉を食べない「ゆるベジ」の日を作ってみようと思います。
参考記事
日経新聞電子版 9日 「アサヒコ、やよい軒に植物肉を提供 野菜炒め定食など」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC081GT0Y2A600C2000000/
朝日新聞デジタル18日 「大豆ミート 植物たんぱくで肉のあじわい」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15325857.html?iref=pc_ss_date_article
参考資料：第3回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel【21年12月】
https://vegewel.com/ja/style/statistics3
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