オリオン通りまで来たクマ 殺処分以外の方法はあるのか

6月7日の未明、筆者の地元宇都宮市の中心部にあるオリオン通りを1頭の野生のクマが駆け抜けました。多くの飲食店やアパレルショップが立ち並び、宇都宮の顔とも言えるアーケード街で目撃されたことは衝撃的でした。なぜ近年クマの出没が相次ぐのでしょうか。

市内中心部のオリオン通り(9日、筆者撮影)

このクマが最初に目撃されたのは、前日6日の早朝、市街地から北に約3㎞離れた長岡公園でした。その後、クマは警戒網をかいくぐって南下し、県庁近くの住宅街や商業中心地へと侵入。市内では目撃情報が相次ぎ、市教育委員会は全市立小中学校94校を急遽、臨時休校とする異例の措置を取りました。警察や行政、猟友会による捜索の末、9日午後に市内の民家敷地内でようやく1頭が麻酔銃により捕獲されましたが、市街地は数日間にわたり強い緊迫感に包まれました。

クマはこの道の奥から現れ、オリオン通りを横切ったとされる(9日、筆者撮影)

クマが人里に近づく要因には、中山間地域の過疎化によるクマの生息域の拡大や柿や栗などの「誘引物」の獲得、ドングリ類の凶作など食料状況の悪化が考えられています。しかし、人里に下りてきたクマをどのように処理するか、という点は大きく意見が分かれています。宇都宮市中心街でのクマの出現では、多くの問い合わせが市役所にあったといいます。出没から約2週間で目撃情報以外の電話やメールなどは400件以上。多くは捕獲後にクマを殺処分したことへの批判だったのです。

 

そんな中、殺処分に頼らない新たな手段として注目されているのが、クマ対策の専門犬「ベアドッグ」です。これはフィンランド原産の大型犬「カレリアン・ベアドッグ」の優れた嗅覚と聴覚を活かし、クマを追跡して大きなほえ声で威嚇するというものです。夜間巡回などでクマと対峙すると、ハンドラー(指導員)の指示のもとで激しくほえ立て、クマを山の奥へと追い払います。

ベアドッグはクマに襲い掛かることはないため、互いに傷つけ合うことなく「人里は居てはいけない場所だ」とクマに学習させることができます。この活動を2000年から続けている長野県軽井沢町のNPO法人「ピッキオ」では、ベアドッグの導入により14年連続で人身被害ゼロを達成しています。ベアドッグの育成や訓練には厳しい適性テストが必要で、日本国内での導入はまだ一部には過ぎません。しかし、野生動物との平和な共生を実現するための大きな希望として、今後の活躍を期待しています。

 

 

参考記事:

 

6月9日付 朝日新聞デジタル 宇都宮市でクマ1頭を捕獲、市街地で泳ぐ姿も 全小中学校が臨時休校(https://digital.asahi.com/articles/ASV6924D7V69DIFI017M.html?)

6月24日付 読売新聞オンライン 宇都宮クマ出没、目撃情報以外に批判など400件…「殺処分しないで」「山に放すべき」と市外から多数(https://www.yomiuri.co.jp/national/20260623-GYT1T00458/

2025年5月25日付 時事ドットコム 「生粋の猟犬」ベアドッグが立役者 クマの人身被害、軽井沢で14年連続ゼロ(https://www.jiji.com/jc/v8?id=20250519beardog#goog_rewarded