2028年に大学・大学院を卒業予定(いわゆる28卒)の学生では、すでに就職活動を始めている人が多いのではないでしょうか。筆者もそのうちの1人で、現在は夏のインターンシップ(インターン)の選考に追われています。多くの企業が夏から冬にかけて主に大学3年生や大学院1年生向けに実施する職業体験です。
就職前に実際に職務を体験できることで、業務や企業に対する理解が深まり、今後の職業・企業選択の参考になることから、学生には高い人気があります。そのため厳しい事前選考が実施されることも多く、書類選考やグループディスカッション、面接と、就職試験の本番さながらです。また、一部企業ではインターン参加者限定で、早期選考への招待や一部選考の免除などのアドバンテージがあることも、高い人気の理由の1つとなっています。
早期から企業と接点を持つチャンスがあることに好意的な声がある一方で、筆者の周りからは否定的な声も少なからず聞こえてきます。例えば、インターンシップは今後の本選考に有利になることが多いことから、学生生活を犠牲にしてでも参加せざるを得ないと考えている人が多いです。実際に参加してみると、「今日授業あったけど休んで来たんだよね」と言う学生に何人も出会いました。学業と就活(就職活動)の両立が難しいことは筆者自身も感じており、選考に追われるあまり―自身のやりたい研究や活動に注力を注ぐことが困難な状況です。
夏インターンが終わっても、すぐに秋・冬インターン、本選考と続き、場合によっては1年以上続く可能性があることから、今後のことを考えると気が遠くなります。就活の早期化・長期化に関して学生側には賛否両論あるわけですが、企業、大学はどう考えているのでしょうか。
現在、就活のルールとして、卒業する前年度の3月に広報活動解禁、卒業年度の6月に選考開始、10月に内定が目安とされています。政府が主導するルールですが、罰則規定など法的な拘束力はありません。学生が学業や課外活動に専念できる環境をつくることが目的とされていますが、多くの企業が6月1日以前から採用活動を行っている実態が横たわります。
就活が早期化した理由としては、学生優位の売り手市場の中、外資系企業が選考期間の縛りとは無関係に早期から動き出したのを受け、各社が競合に先んじて優秀な学生を囲い込もうとして加速したと考えられます。優れた学生との接点が早くから持てるという点は、企業にとって大きなメリットですが、デメリットも考えられます。内定を早期に出すことで、その後の辞退者が増える可能性は否定できません。内定者を留めておくためのコストや欠員を補うために新たに志望者を募る労力は、企業にとって大きな負担となっています。また、インターン選考が実質的な選考という印象を与え、落選した学生が本選考を受けにくくなる傾向が指摘されています。
一方で、大学側は学生の早期からの就活を勧めざるを得ない状況だと言います。就職率の高さや有名企業への就職の多さを売りにしている私立大学が少なくないからです。国立大学はというと、学生の就職実績が、国からの運営費交付金の評価項目のひとつになっており、学生の就職実績が下がると研究費にも響きます。就活のために授業を欠席したり、研究や卒論がおろそかになったりする学生が多く、大学が就活予備校化していることに疑問を呈する教職員もいます。
早期からの就活は本当にメリットばかりでしょうか。結果として長期化につながり、学生も企業も大学も疲弊しているように感じます。さらには、大学3年生から就活を始めていては遅いと考え、大学1、2年生から就活を始めている学生もいます。低学年向けのイベントのみならず選考まで実施している企業もあります。
先日、就活を終えた4年生の先輩と話す機会がありました。「就活でガクチカ(学生時代に頑張ったこと)を沢山聞かれたけど、それこそ『就活』だよ」と笑いながら話していました。大学時代に頑張ったことを評価するはずの就活が、学生生活に力を入れる時間や体力を奪う。本末転倒ではないでしょうか。また、学業や課外活動に尽力した就活生よりも早期に準備できた人が有利になるとすれば、ガクチカのために課外活動をするという、手段と目的が逆転した状況を生む恐れがあります。就活の早期化が、学生にとっても企業にとっても大学にとってもメリットばかりではないことを再認識して、行き過ぎることがないように自戒することを望みます。
参考資料:
・朝日新聞デジタル3月14日付「大学生の就活、際限なき早期化 1、2年生も説明会に」
・日本経済新聞デジタル6月2日付「採用選考解禁、内定率はや8割 負担増で三菱地所はインターン廃止」
・日本経済新聞デジタル6月2日付「[社説]新卒採用の早期化に歯止めを」
・日本経済新聞デジタル6月2日付「就活ルールとは 政府が主導、法的拘束力なし」
・日本経済新聞デジタル5月27日付「就活の早期化、企業の6割『悪い影響あり』 採用コスト増に疲労感」