元イスラエル兵は日本で気づいた「彼らも、人間だった」

「ずっと、戦闘機のパイロットになりたかった。でも、ならなかったから人を殺さないで済んだ」。

そう語るのは、イスラエル出身のダニー・ネフセタイさん(69)だ。現在は埼玉県で家具職人として暮らすかたわら、全国各地で平和に向けた講演活動を行っている。

(2026年10月5日 筆者撮影  ダニー・ネフセタイさん)

「殺すか、殺されるか」——すり込まれた価値観

イスラエルでは、原則18歳以上の国民に兵役の義務が課される。ダニーさんも高校を卒業した後、空軍に入隊した。幼い頃から憧れていたのは、パイロットになることだった。しかし19歳のとき、最終段階の試験で不合格になった。当時はショックで泣いたという。

「幼少期から『周りの国はすべて敵だ』『自分たちを守らなければ、殺される』という教育を受けてきた。当時は、『誰も殺さない、殺されないで生きる道』という選択肢が存在することは、想像できなかった」

代々木公園の屋台で気づいた 「彼らも、人間だった」

空軍での3年間の兵役を終えたダニーさんは、1年間のアルバイトで資金を貯め、アジア各地を訪れた。その中で、日本にも立ち寄った。

東京・代々木公園を訪れたときのことだ。とある屋台で食事を買おうとすると、そこで働いていたのはシリア人やイラン人だった。イスラエルにとって「敵」だと教わってきた人たちだ。勇気を出して声をかけてみた。すると、彼らは笑顔で応え、気さくに話をしてくれた。

「ずっと敵だと教え込まれていた人たちは、自分と同じような『普通の人間』だった。それに気づいた瞬間、自分が受けてきた教育の恐ろしさを痛感した」

「敵」というラベルは、国の教育によって貼られたものに過ぎなかった。ダニーさんはそう気づいたという。

「戦闘機のパイロットにならなかったから、人を殺さずに済んだ。戦闘機の目的は、人を殺害したり、物を破壊したりすることだけだ」。今は、パイロットに憧れていた当時の自分を恥ずかしく思う。

終わらぬ戦闘 解決の道はどこに

パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスなどの武装勢力とイスラエルの戦闘が始まってから、10月7日で3年が経った。25年10月には停戦合意がなされたが、その後もイスラエル軍によるガザへの攻撃は続いている。ガザ保健省によると、パレスチナ側の死者は戦闘開始から今月8日までで、7万4千人を超えているという。

筆者は先日、イスラエルから日本を訪れた高校生らと話す機会があった。ある生徒は、こう語った。「誰も戦争なんてしたくない。でも、やらなくちゃいけないんだ」。

「戦争をしない」という選択肢を、なぜ持てないのだろうか。一体なにが、高校生たちから、その選択肢を見えなくさせているのだろうか。ダニーさんの言葉を前に、考えていきたい。