6月22日、官庁訪問(総合職)の最後の日程が終わりました。官庁訪問(総合職)とは国家総合職試験に合格した学生たちが志望する中央省庁を実際に訪問し、業務説明を受けたり、複数回の面接を経たりして、最終的な採用内定(内々定)を勝ち取るという採用選考プロセスです。キャリア官僚への最後の関門と言えます。
この官庁訪問が、特に地方の学生に対して極めて重い経済的負担を強いている現実はあまり知られていません。6月中旬から約2週間にわたって、主に中央省庁が集まる東京・霞が関で実施されます。関東周辺に泊まる当てがないと、東京でホテル暮らしをしなければなりません。宿泊費、往復の交通費、日々の食費などを合計したら、10万円は優に超えた出費となります。官庁訪問をつい先日終えた先輩からは、「15万円ほどかかった」との声を聞きました。しかも、民間企業の多くが地方の学生に対して交通費や宿泊費を補助する中で、役所からの経済的補助はありません。また、官庁訪問は平日に実施されるため、大学の講義を休まなくてはなりません。
近年、官僚を志望する学生の減少が社会問題となっています。民間の大企業と比較した際の賃金の差や「ブラック霞が関」と呼ばれるような長時間労働が強いられる労働環境などが理由と考えられています。しかし、選考段階における重い経済的負担も一因だと考えられると思います。さらに、就職活動の早期化を踏まえると、官庁訪問の時期にも問題があると言えます。5月1日時点で27年卒の学生の内定率は約8割に達していました。国家総合職試験の日程の前倒しが予定されていますが、6月実施の慣行に縛られた官庁訪問自体の時期や実施方法も見直す時期が来ていると言えそうです。
また、多様な人材を確保するという点でも問題があります。行政には、多様なバックグラウンドを持った人材が必要不可欠なはずです。地方の課題を知る人材、経済的な苦難を理解している人材。そうした若者が、霞が関にたどり着く前に、費用の壁によって排除されているのだとしたら、それは国民にとって大きな損失だと言えます。それでなくても官僚組織や公務員に対する世論の風当たりは決してやさしくありません。だからこそ国の未来を左右する政策を立案する組織の門戸はすべての学生に等しく開かれ、覚悟を持った多彩な人材が採用されるべきです。
参考記事:
・2024年4月6日付 朝日新聞 『止まらない「霞が関離れ」 20年前に改革訴えた元官僚が語る処方箋』
https://www.asahi.com/articles/ASS3Y6FB3S3FUTFK006.html
・2025年6月19日付 日本経済新聞 『キャリア官僚の志望減少続く 処遇と労働量見合わず 申込者数10年で3割減』
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89460640Y5A610C2PD0000/
・2026年6月1日付 日本経済新聞 『採用選考解禁、内定率はや8割 負担増で三菱地所はインターン廃止』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC266ZS0W6A520C2000000/
・2026年3月5日付 日本経済新聞 『国家公務員の採用試験前倒し キャリア官僚は2月に実施、人事院』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA029SH0S6A300C2000000/