春の新聞週間2026 AI時代の中で新聞をどう読むか

新聞週間 2026年の取り組みは
新聞業界では、毎年10月15日から1週間を「新聞週間」と定め、様々なイベントを開催してきました。期間中には、今年で79回目を迎える新聞大会が開かれ、「新聞協会賞」の贈呈式などが行われます。また、2003年からは4月6日からの1週間を「春の新聞週間」として、その初日を「新聞をヨム日」としています。進学や就職の時期に合わせて、街頭での試読紙配布やPRイベントを通じ、広く購読を呼びかけています。今春の新聞週間キャンペーンで筆者が特に関心を持った企画が、日本経済新聞社の連載「#報道の未来」です。ここでは「あらたにす」主催社の読売・朝日の両社長や、経営者、著名人の方々がメディアの未来を問うインタビューに答えています。

新聞とAI 人間の強みはどこに
各氏へのインタビューの中で、最も対照だったテーマは「AI」でした。 朝日新聞社は「AI全振り宣言」を掲げ、急速に発展するAIを全面的に活用する姿勢を示しています。一方で、読売新聞社は記者のAI使用を一部認めつつも、要約や記事の下書き作成などは禁止しています。さらに、一覧性に優れた「紙の新聞」は守っていくべきであるとも宣言しました。同じく日経新聞の「AI時代の新聞を考える経営者・著名人らのメッセージ」の中で、作家の平野啓一郎氏は次のように述べています。

「ジャーナリズムの本質はうまく言語化できていない現象を取材して、言語化していくこと。それはやはり、人間のジャーナリストが当面やらないといけない」

AI技術が進む中で、「人間にしかできないこと」とは何かを考えてみました。私たちはAIを利用する際、主に文章の要約や情報の検索に役立てています。一方、日々大切にしている時間や経験の本質は、誰かと何かを共有している瞬間の積み重ねにあるのではないでしょうか。

哲学者のアドラーは「すべての悩みは対人関係である」と指摘しています。AIに人間関係の悩みを相談すれば、解決策の一つは提案してくれるかもしれません。しかし、悩みは解決することだけがすべてではなく、誰かに話を聞いてもらうことや、共感される時間も大切なのだと思います。

筆者は昨年、就職活動を通じて様々な新聞社のインターンシップに参加しました。そこで最も強く感じたのは、記者は「聞くことのプロフェッショナル」であるということです。質問の内容やタイミング、言い方、トーン、そして表情。その圧倒的な取材力には驚かされるばかりでした。平野氏の言う「言語化できない現象」を捉えるためには、こうしたプロの取材を通した記事こそが、今求められているのだと感じます。

新聞がこれからも生き残っていくためには、若い世代が「面白い」と思えるコンテンツが不可欠です。そしてそのカギは、変化が急できわめて不安定な時代を生きる私たちが抱く、「言語化できない人間らしさ」に焦点を当てることに隠されているのではないでしょうか。