テイクアウトで地域の味を守る

中央大学多摩キャンパス近くにあるお食事処は、20日からテイクアウトを始めました。40年近く続くお店ですが、お持ち帰りは初めての試み。マスク、ビニール手袋、飛沫感染を防ぐビニールカーテンに加え、お客様に間隔を空けて並ぶよう呼びかける貼り紙。今できる最大限の感染予防がなされていました。

日替わりお弁当とお惣菜のメニュー。20日、筆者撮影。

このお店はバランスの良く美味しい家庭料理と、お店を営むご家族の人柄から地元で愛される「地域のご飯屋さん」。特に実家の料理に近い味がリーズナブルな値段で味わえるとあって、授業後に足を運ぶ大学生も少なくありません。とは言え、7都道府県に緊急事態宣言が発令された今月7日を境に一気に客足が落ち込んだと言います。家族に感染する危険性も考えた末に、短縮営業を経て休業へ。しかし何もせずにはいられないと、お弁当、お惣菜の販売を開始することにしました。この決断を後押ししたのは、地域の方々からの「お店のご飯が食べたい」の声でした。

「しばらくテイクアウトを続けていくと思う。宣言の期間である5月6日までと言わず。夜帯の営業もしてほしいという声も頂くが、今はとにかく様子見ですね。お弁当販売から始めてみます」

と、女将さんは笑って話してくれました。

筆者が購入した鳥唐揚げ弁当ともやしニラナムル。20日、筆者撮影。

 

お持ち帰りや宅配サービスを始める飲食店が増えたことを受け、地域やSNSでそれを支えようとする動きが出てきています。その1つが市内飲食店応援プロジェクト「#○○エール飯」。○○には市名が入り、各自治体がホームページなどで参加を呼び掛けています。市内でテイクアウトやデリバリーを利用し、その料理の写真に「#○○エール飯」をつけてSNSに投稿することで、大好きなお店の味を残すためのお手伝いをします。インターネットの検索ではヒットしにくい個人店の取り組みも、ハッシュタグを通して見つけることができます。「美味しいはコロナに負けない」「食べて応援」というキャッチコピーが、忘れかけていた前向きさを思い出させてくれます。

今私たちにできることは、頑張るお店を広めること。もちろん自分の体調と相談しながら、3密を避けることは忘れてはいけません。飲食店、利用者共に感染のリスクを最大限抑える努力が必要です。そして、地域の飲食店に「お店の味が食べたい」「また食べに来ます、買いに来ます」と気持ちを伝えることかもしれません。

 

参考記事:

21日付日経新聞朝刊(東京)29面(東京首都圏経済)「飲食店、官民で支える」

14日付読売新聞朝刊(東京13版s)9面(経済) 「店内感染防止に苦心」

17日付朝日新聞朝刊(東京13版s)6面(経済) 「自粛の嵐 新サービスに活路」

 

参考資料:

八王子エール飯Twitter