韓国スターバックスが実施したキャンペーンが、韓国国内で問題視されています。
同社は5月18日、「タンクデー」と称してタンブラーの販促イベントを行いましたが、1980年のこの日に光州事件が起きています。軍事政権が投入した戒厳軍が民主化運動に参加していた学生や市民に発砲し、160人以上が犠牲となりました。韓国における民主化運動を象徴する歴史的事件の一つです。キャンペーン名に使われた「タンク」という表現が当時投入された戦車を想起させることから、インターネット上では批判が相次ぎました。
さらに、キャンペーンのキャッチフレーズ「机にドン!」も問題視されました。1987年にソウル大学の学生運動家が警察の拷問によって死亡した事件があり、警察当局は当時、「机を『ドン』と叩いたら『うっ』と言って死んだ」と説明しました。これは事実隠蔽を図ったものとして広く知られており、今回の表現がその事件を連想させるとの批判が広がりました。
政府からも批判の声が上がっています。尹昊重(ユン・ホジュン)行政安全相は21日、自身のSNSで「民主主義の歴史や社会的価値を軽視し、商業的に利用する企業の商品は使用しない」と表明しました。
韓国スターバックスの経営権を持つ流通大手・新世界グループは18日、同社社長を解任しました。さらに、鄭溶鎮(チョン・ヨンジン)会長は26日の記者会見で、「不適切なマーケティングにより、多くの方が深い苦痛と怒りを感じたことを重く受け止めている」と謝罪しました。
同グループは内部調査の結果、20〜30代の若手担当者が企画を提案し、十分な確認がないまま承認されたことを明らかにしました。キャッチフレーズを考える際には、人工知能(AI)を参考にしたとも説明しています。
同社は、リスク管理体制に不備があったことを認め、再発防止に向けて体制を改善するとしています。米スターバックスも19日に謝罪しましたが、事態は収束しておらず、SNSでは不買運動を呼びかける投稿や、商品券の払い戻し方法を共有する投稿も広がっています。
企業が海外で事業を展開する際には、その国の歴史や社会的背景、国民感情について十分に理解することが求められます。特に、多くの犠牲者を出した歴史的な出来事に関わる表現については、慎重な配慮が必要でしょう。また、不適切な表現によって人々を傷つけた場合には、誠実に謝罪し、再発防止に努める姿勢も重要です。
一方で、今回の問題をどう受け止めるかは、最終的には消費者一人ひとりの判断に委ねられるべきだとも考えます。不買運動そのものは市民の意思表示の一つですが、政府高官が特定企業の商品を使用しないと表明することについては、慎重であるべきではないでしょうか。企業側はすでに謝罪し、社長の解任など責任を取る姿勢も明らかです。民主主義社会においては、企業への批判や評価も、市民自身の自由な判断に基づくことが望ましいと思います。
<参考記事>
日本経済新聞2026年5月22日「韓国政府がスターバックス「不買宣言」 光州事件想起で波紋」