筆者の通っている西南学院大学で8日、女子同窓会により生理用品が配布されました。生理用品は高額ではありませんが、毎月の購入となると負担は無視できません。一人暮らしの筆者や友人にとっては、非常に助かるイベントでした。
以前に比べると、生理(月経)を積極的に話題にするようになってきました。身体的・経済的・社会的な負担となる生理への理解が広まることは、誰もが生きやすい社会への一歩となるでしょう。一方で、誤った言説が広がっていることもまた事実です。性別を問わず理解が高まり、精神的なものを含めて痛みや苦しみを和らげるには、どのような施策が必要なのでしょうか。
◾︎生理はお腹が痛いだけじゃない、「生理の貧困」や災害時の不安
初めに、生理の苦しみは「お腹の痛み」や月経前症候群(PMS)といった身体的なものにとどまりません。経済的負担や外出時の急な生理による衣服の汚れ、経血の不快感、災害時の物資不足への不安など、多岐にわたります。
コロナ禍の2021年には、女性が経済的な理由などで生理用品を購入できない「生理の貧困」が社会問題となりました。3000人の女性(18~49歳)を対象とした厚生労働省の調査では、20年2月以降に生理用品の購入に苦労した経験のある人は8.1%いました。
経済産業省の試算によると、女性の生理に伴うパフォーマンス低下や欠勤による経済損失は、年間約5700億円に上るといいます。経済的な視点からも、生理についての理解を高め、苦しみを少なくしていく必要があるのです。
◾︎生理による苦痛軽減のための取り組み
民間企業による生理用品の無償提供は、全国的に広がっています。駅や商業施設のトイレに設置されている「OiTr(オイテル)」を見たことがある人は、少なくないでしょう。事前にスマホアプリをダウンロードした上で、個室内に設置された端末機器に映るPR動画を見ることで、利用者は生理用ナプキンを入手することができます。生理用品の費用はPR動画の広告料で賄われます。再生するたびに1枚ずつ配布されるため、他の人が触れることがなく衛生的です。オフィスや学校、公共施設への設置が進んでおり、1ヶ月に約25万枚の利用があるようです。
◾︎バックラッシュ的な言説
一方で、生理の対処を「女性の自己責任」に押し込める動きも表れています。今年3月、生理用ナプキンをどこでも置いてほしいとSNSに投稿した三重県の吉田紋華県議に、批判や誹謗中傷が集まりました。
自民党の杉田水脈前衆議院議員はX(旧Twitter)上に「常時ポーチの中にナプキンを一つ入れておきなさいってお母さんから教えてもらいませんでしたか? 女子の嗜みですよ~」と投稿し、1.5万件の「いいね」が集まりました。県議会事務局には、吉田氏への殺害予告が届いています。
生理用ナプキンを持ち歩けば済む話だと結論づけることは簡単です。しかし、女性が生きやすい社会にするために発信したこと自体を糾弾するのはいかがなものなのでしょうか。ましてや、殺害予告の送信など論外で、到底許されるものではありません。
◾︎生理について日頃から考える社会にするために
生理は女性のみに現れる現象ですが、その負担や苦しみを社会全体で理解し、共に解消していく必要があります。そのためには、生理が生活に及ぼす影響や、1回の生理に必要なナプキンの枚数、かかる費用などを男性も含めてすべての人が正しく理解することが大切です。生理用品の無償配布などの具体的措置も重要ですが、まずは私たちの意識や理解を深めていきたいものです。
参考記事:
・2025年8月22日付 読売新聞オンライン 「女性の『生理休暇』見直す動き広がる…抵抗感ない名称に変更、性別問わず更年期の不調にも」 https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250821-OYO1T50081/
・2025年3月11日付 読売新聞オンライン 「性と生殖の権利、『生理の貧困』『望まない妊娠』対策進む…性教育に課題」 https://www.yomiuri.co.jp/national/20250310-OYT1T50197/
・2025年5月20日付 朝日新聞デジタル 「生理の『困った』、社会の問題 『役所のトイレにナプキンを』投稿に中傷」 https://digital.asahi.com/articles/DA3S16217273.html
・2022年12月21日付 朝日新聞デジタル 「生理用ナプキンの無料提供、『つらさ知って驚いた』男性2人が起業」 https://digital.asahi.com/articles/ASQDJ5CLWQDJOIPE011.html
参考資料:
・OiTr公式HP https://www.oitr.jp/