企業と消費者 力を合わせフードロス解決へ

「食品ロス削減推進法」がこの秋、施行されます。年間1人あたりで51キロと、食品廃棄問題が深刻な日本。事態を重く受け止め、その改善に向け企業も消費者も動きはじめています。

食品ロスと聞くと何を思い浮かべるでしょうか。特売でたくさん買ったはいいが食べきれず捨ててしまったもの。また期限切れなどの理由から店頭で販売出来なくなったもの。それだけではありません。店先に並べられず、消費者の目に触れることもなく捨てられていく食品があります。

その原因の1つが「3分の1ルール」です。法律による規制ではありませんが、製造日から賞味期限までを3分割し、納入期限、販売期限が決められています。製造日から賞味期限が1年間の場合、①食品メーカーらから小売店までの納入が4か月②小売店から消費者に販売するまでが4か月③消費者の購入から賞味期限までが4か月となります。①、②それぞれの期限を過ぎると、賞味期限までいくら日数があっても店頭に並べられることはありません。根強い商慣習により、必要もない廃棄が増えているのが現状です。

以前、フードバンクにボランティアに行った際も、協賛企業からこの「3分の1ルール」で販売できなくなり、寄付された食材が多くありました。缶がへこんでしまったなど生産過程で生じた不都合があるわけでなく、賞味期限ぎりぎりのものでもなく、食べるのに何の問題があるわけでもないのに捨てられ商品の多さに驚きました。

納品期限は、何も日本独自のルールではありません。しかし、米国では賞味期限の2分の1、欧州は3分の2、英国に至っては4分の3が一般的となっています。これらと比べると日本の「3分の1」という数字は特に短いと言えます。

長らく「3分の1」を貫いてきた日本では、販売できる期間が短くなることに不安を感じる業者も多く、なかなか改革に踏み切れませんでした。ですが新法の施行を受け、ようやくセブン&アイ・ホールディングスをはじめとする大手企業が「3分の1」から「2分の1」に変更することを決定しました。食品ロス問題の解決に向け、大きな一歩を踏み出し始めています。

消費者の意識も変わりつつあります。恵方巻きの大量廃棄を皮切りに、ニュースで食品ロス問題を目にする機会が増えました。以前は「日本の消費者は鮮度が高い商品を好む傾向が強い」とされていました。それが、「もったいない」から買おうという流れに変わりつつあります。8月31日「食品ロスは家庭の救世主?」の記事でも取り上げましたように、賞味期限が近い商品を安売りする店も増えてきています。近所のケーキ屋では、賞味期限が近いマカロンを半額で販売するようになりました。社会貢献にもなり、安くおいしいものが買える。良いことづくしではないでしょうか。

企業の「3分の1ルール」を見直す改革。消費者の意識の変化。小売店の工夫。みんなの力で無駄な食品ロスが改善することを願います。

参考記事
7日付 日本経済新聞 夕刊3版1面「消費で社会貢献 「ハレの日」にも」

2日付 日本経済新聞 電子版「食品ロス 新法対応急ぐ」

2018年10月1日 朝日新聞DIGITAL「賞味期限の「3分の1ルール」 見直して減らす食品ロス」
https://www.asahi.com/articles/ASL9Z5WBJL9ZULFA009.html

 

参考資料
2013年5月19日 東洋経済オンライン 「賞味期限ルール見直しで、商慣習は変わるか」https://toyokeizai.net/articles/-/13991?page=2

8月3 1日 あらたにす「食品ロスは家庭の救世主?」