就労支援給付金915万円詐取疑い
障害者ら働くB型事業所の新規開設を停止へ、不適切運営増で
最近、新聞を読んでいると就労継続支援B型事業所に関する記事が目に入ります。そこで「社会福祉法人みやこ」の代表である羽根田晴美さんに、自身の運営する就労継続支援B型事業所についてお話を伺いました。
本記事では、まず就労継続支援B型事業所の概要、現状、課題を整理します。次回は、羽根田さんのご協力で「みやこ西院作業所」での具体的な活動を紹介します。
就労継続支援B型事業所とは
2006年の障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)の成立を受けて、就労継続支援事業所は創設されました。このうちB型事業所は、通常の事業所に雇用されることが困難な方を対象にしています。
また、利用者の作業能力や生活スキルの向上を図り、自立した生活につなげるために生産活動の機会を提供しています。B型事業所では、事業所と利用者は雇用契約を結んでいません。事業所が利用者の報酬に当たる工賃を独自に定めます。この工賃は、生産活動による収益から経費を差し引いたものが充てられます。
厚生労働省によると、B型事業所の平均工賃は年々増加しているものの、23年度で月額の平均工賃は23,053円にとどまります。時給換算で約243円と全国の平均時給(1,054円)を大きく下回ります。
B型事業所の収益構造
B型事業所の収益は「訓練等給付費」と「生産活動収入」で構成されます。原則、訓練等給付費は国や地方自治体が9割、利用者の利用料金で1割負担されています。生産活動収入とは、利用者の作業によって得られる売上金です。実際には訓練等給付費が収益のほとんどを占めており、この額は前年度の平均工賃月額と事業所の職員の配置比によって基本報酬が決まります。そのため、月額の工賃が高く、人員配置が整っている事業所ほど給付費は高くなります。
こうした仕組みから、作業能力の高い利用者の在籍が、事業所の収益に影響する構造になっています。
利用者は増加、新規参入は制限?
B型の事業所数、利用者数は年々増加しています。筆者の住む京都市でも、22年から26年までの5年間で95事業所が新たに参入しました。一方で、京都市は25年9月に新規参入や定員の増加を制限する「総量規制」を導入しました。同年10月までに申請を完了した事業所を最後に、それ以降は公募による場合を除き新規認定をしないほか、既存事業所の定員変更も認めていません。
大阪市も昨年度末に、2026年8月1日から2027年7月1日の間、B型事業所の新規指定を行わないことを決定しました。需要の高まりに逆行するような規制がなぜ導入されたのでしょうか。その背景には、B型事業所の制度設計が生み出す構造的な課題があります。
B型事業所を取り巻く課題
京都市の総量規制により、既存の事業所は定員拡大によって収益を増やすことが難しくなりました。利用者の利用日数や在籍数に応じて基本報酬が発生する仕組みになっているB型事業所は、経営的な観点から必要以上に利用者の継続を重視する傾向が生じる可能性があります。
ここで問題となるのは、こうした行動が福祉サービスの質や支援の成果とは異なる営利目的の競争を生み出してしまう点にあります。京都市は、総量規制の理由として、経営目的での利用者の囲い込みやサービス管理責任者の偏在、供給過多を挙げています。特に囲い込みは、利用者の選択の自由を狭めるだけでなく、適切な支援への移行機会を阻害する可能性もあります。
新規参入する一般企業は、福祉分野に関する経験が浅く、ノウハウが乏しい場合もあり、利用者一人ひとりに適した支援が十分になされているのかという指摘がされています。経験や専門性が不足している場合、画一的な支援や形式的な作業提供にとどまりかねません。こうした状況は、結果として支援内容よりも運営のしやすさ、効率性が優先される要因となり得るのではないでしょうか。この状況を是正するためにも、サービス管理責任者の配置や、自治体の実地指導が必要になります。一方で人材の不足や、自治体の負担増などの問題もあります。
こうした中、厚生労働省は25年10月から就労選択支援施設制度を実施しています。これは専門家が障害者の希望を聞き取り、利用する事業所選びで助言するものです。事業所と利用者のミスマッチは減り、特性に合った就労先を選ぶことが容易になるかもしれません。しかし、指摘されている構造の問題を是正するものではありません。制度と現場のズレをどのように埋めていくのか。今後の就労継続支援B型のあり方が問われています。
参考記事
・2026年4月1日付 朝日新聞朝刊 (大阪)23面 「B型事業所、新規開設停止へ 大阪市、総量規制し質確保」
・2026年3月31日付 朝日新聞デジタル 「障害者ら働くB型事業所の新規開設を停止へ、不適切運営増で 大阪市」
https://www.asahi.com/sp/articles/ASV303CCZV30OXIE05LM.html
・2025年11月26日付 日経電子版 「『障害者に働く場』支援ビジネ
ス、利用企業拡大業者丸投げ指摘も」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF141P80U5A111C2000000/
・2025年11月27日付 日経電子版 「障害者の就労支援『無秩序な参入』 サービスの質低下に懸念」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF199550Z10C25A9000000/
参考資料
・2026年3月31日付 大阪市 「障がい福祉サービスに係る総量規制の実施について」
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000674730.html
・2026年3月26日付 京都新聞デジタル 「市内の障害福祉サービスで不正請求 3事業所の指定を取り消し」
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1683412
・2025年11月28日 厚生労働省 「指定就労継続支援事業所の新規指定や運営状況の把握に関するガイドラインについて・生産活動シートの内容」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001620468.pdf
・2025年11月28日 厚生労働省 「指定就労継続支援事業所の新規指定や運営状況の把握に関するガイドラインについて・ガイドライン作成の背景・課題」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001620464.pdf
・2025年9月25日付 京都新聞デジタル 「京都市が就労継続支援B型事業所『総量規制』へ 質向上につながるか『成長への視点が大切』」
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1568562
・2025年1月30日付 厚生労働省 「就労選択支援について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf
・2024年11月25日付 TBS NEWS DIG 「時給243円「あまりにも低すぎる」 障害者への工賃“倍増”を実現 福祉の現場から誕生した成功例」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1570779