2月22日は「猫の日」でした。前回の記事では、猫に関連する経済活動「ネコノミクス」について紹介しました。今回は、日本で暮らす猫たちが直面する問題と、その解決に向けた取り組みを見ていきます。
まず注目すべき課題は、飼い主の高齢化です。飼い主自身の体力が落ちると、日々の世話が難しくなります。特に一人暮らしの場合、入院や施設への入所、孤独死などをきっかけに、猫の世話をする人がいなくなることがあります。その後、新しい飼い主が見つからないまま残された猫が保護されるケースも少なくありません。また、避妊や去勢をしないで飼い続けた結果、数が増えすぎて世話が行き届かなくなる「多頭飼育崩壊」も各地で発生しています。
もう一つの深刻な問題が、減らない殺処分です。犬は狂犬病予防の観点から自治体が捕獲することがありますが、猫は原則としてその対象ではありません。そのため保護施設に入る猫の多くは、さまざまな事情で飼えなくなった飼い主が持ち込んだり、屋外で保護された子猫を引き取ったりしたものです。環境省の統計によると、猫の殺処分数は2000年に犬を上回り、以降も高い水準が続いています。しかし施設の収容能力には限りがあり、行き場を失った猫たちには、殺処分という結末が待っています。
背景の一つが、猫の繁殖能力の高さです。早ければ生後4か月で妊娠できるようになり、交尾をすれば非常に高い確率で妊娠します。年に数回出産でき、一度に複数の子猫が生まれます。このため、繁殖を制限しなければ、その数は1年で20匹、3年で2,000匹以上に増えると言われています。
こうした問題に対して、各地でさまざまな取り組みが進んでいます。NPO法人が運営する「永年預かり制度」は、団体が所有権を持ったまま、保護した猫を高齢者の家庭に預けるというものです。預かり主が病気などで世話を続けられなくなった場合は、団体がふたたび引き取って面倒を見ます。また、一人暮らしの高齢者の自宅にスタッフが定期的に出向き、餌やりやトイレの掃除などの世話をサポートする活動も行われています。こうした仕組みは、高齢者と猫が互いに孤立せず、安心して暮らし続けられる環境を支える役割を担っています。
野良猫の繁殖を抑える「TNR活動」も全国的に広がっています。Trap(捕獲)、Neuter(不妊去勢手術)、Return(元の場所に戻す)の頭文字を取ったこの活動で、手術を終えた猫は耳先をV字にカットして目印にします。その形が桜の花びらに似ていることから、「さくらねこ」と呼ばれています。一代限りの命を地域で見守り、将来の殺処分を減らすための方法として各地で定着しつつあります。
猫は私たちに癒やしや安心感を与えてくれる存在です。しかし、すべての猫が同じように人との生活を送れているわけではありません。身近で暮らす猫たちを幸せに過ごさせるためには、個人のペットとしてではなく、コミュニティの一員として捉える視点が求められます。行政や動物愛護団体、企業、そして市民が連携して息の長い支援を行うことがその土台になります。猫と人が共に生きる社会を目指すには、厳しい環境で暮らす猫たちの現状に目を向けましょう。それが一つでも多くの命を守る第一歩になるはずです。
参考記事:
1月31日付 朝日新聞be on saturday 4面(be report)「高齢者とペット、自治体では 問題解決へ、福祉部局と連携加速」
日経電子版 「犬猫殺処分、50年で100分の1 実は『飼わないのも愛情』」,2024年9月7日
読売新聞オンライン 「[安心の設計]飼い主は高齢者…『ペットといたい』見守る地域」,2023年5月29日
参考資料:
公益社団法人日本動物福祉協会「動物福祉について」
環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」
MBSニュース「高齢者とペット『腰痛悪化でエサやれない』『ネコを置いては入院できない』…その飼育支援に取り組む団体『飼うことで元気得られるしネコも助かる』」,2023年2月1日
