公示から投開票までわずか12日。異例の超短期決戦となった真冬の衆院総選挙が8日、投開票を迎え、高市首相率いる自民党が単独で316議席を獲得。連立を組む維新の会と合わせて350議席を超え圧勝した。一方で、総選挙直前に誕生した新党中道改革連合は大敗を喫し、公示前を大きく割り込んだ。
強い追い風
歴史的大勝と言ってもいいだろう。高市自民党は特に40代以下の現役世代から絶大な支持を受けていた。また、浮動票をも根こそぎ攫う、まさしく「高市旋風」が吹き荒れた。
若い世代からの支持を示すのが、前任の石破茂総裁とは違ってネット世論からの期待が大きかったことだ。石破氏を「売国奴」「媚中派」「汚らしい」と非難していたXやユーチューブが、今回の高市氏は過剰なまでに持ち上げていたことを肌で感じた。安倍晋三元首相の保守的なイメージを引き継いだことで、離反した保守層を取り返すことに成功した。このことは昨年の参院選で躍進した参政党や国民民主党の票が当初の予想よりも伸びなかった点にも表れている。また、女性初の首相ということも人気に寄与した。ご祝儀相場が長続きした印象だ。筆者の周辺にいる複数の人へ投票先と理由を尋ねると、「女性初の首相」を理由に挙げた人が一定数いたことが印象深い。
中道は3年後を見据えて
一方、厳しい結果に終わったのが中道を始めとする野党だ。特に、公示前に比べて大きく議席を減らし、惨敗を喫した中道の行く手は厳しい。比例で悠々と当選した旧公明側と、そのあおりを受けて比例復活できない候補が続出した旧立民勢との間に溝ができるのは間違いない。新党の共同代表である野田佳彦、斉藤鉄夫両氏の責任論は免れない。両氏はいずれも辞任を発表し、後任には小川淳也氏が選ばれた。
だが、2年後の参院選を本気で勝ちたいのであれば、いかに党を割ることなく結束できるかが焦点となる。与党がここまでの大勝したことから、次回の選挙ではその揺り戻しが予想される。また、今回の選挙では昨年の参院選と比べても中道が内閣不支持層の受け皿となっていることがうかがえる。 今、目先のことだけを考えて党内対立を深めることは得策ではないと考える。
第三極の存在感は
自民党の圧勝により、存在感が低下しかねないのが維新の会と国民民主党だ。共に横ばいの結果となった。維新の危機感は選挙戦からも見て取れた。新聞報道によれば、ある維新幹部が自民側に対して首相の大阪入りを控えるよう頼んだという。また、元共同代表の前原誠司氏も選挙期間中に「自民党を勝たせ過ぎてはいけない」と踏み込んだ発言をしている。一方で首相側は維新側の要望に応える形で大阪入りを見送ったことから、しばらくは協力関係を続けたい意向と思われる。参院側では過半数割れが続くことから、今後も随所に配慮を見せるはずだ。
国民民主党は、頭打ちの印象だ。小選挙区が壁となり、比例で伸ばせる議席が限界に近付いている。特に、前回は都市部で得た「浮動票」支持の多くをチームみらいに食われたのではないかと筆者は読む。その焦りの裏返しか、玉木代表は選挙中、特に31日の土曜日を境に夜の首都圏で演説を重ねるようになる。開票センターで玉木氏は連立については「これだけの多数に連立しても意味がない」と述べ、否定的な考えを見せた。筆者からすれば、公明党離脱で持ち上がった「玉木首班」の世界線も見てみたかったが、残念ながらそうした機を逸した結果の今回だろう。
大勝のメリット
では、今回の与党大勝は今後の政治にどのような効果をもたらすのか。いくつか挙げてみたい。
まず、対中政策について、より強く出られるということだ。かつて、長期政権を築いた安倍元首相は自身の回顧録で中国との外交について以下のように語っている。「中国との外交は、将棋と同じです。相手に金の駒を取られそうになったら、飛車や角を奪う手を打たないといけない。中国の強引な振る舞いを改めさせるには、こちらが選挙に勝ち続け、中国に対して、厄介な安倍政権は長く続くぞ、と思わせる。そういう神経戦を繰り広げてきた気がします。」今回の大勝は中国側にとっては厄介な問題に映っているだろう。高市首相の国会答弁は軽薄だったが、撤回は不要となろう。
さらに長期政権の足掛かりになりえる。安倍首相以降、菅、岸田、石破と3代続いて短命政権が続いただけに、今回の大勝で「チルドレン」を多く生み出したことで長期政権の第一歩を踏み出したと言えるだろう。選挙で大きな実績を残したことは国会運営のみならず次の党総裁選においても大きな意味を持つこととなる。
最後に、次の衆院選の時期についてだが、衆院の任期切れが近づく頃に予想される29年度補正予算を通したタイミングが次回選挙の時と読むがいかがか。高市首相にはこの大多数を占める国会を再び解散する利が現状見当たらない。無論、この人気が続くようであれば2年後の参院選のタイミングで、今度は憲法改正を争点とした衆参同時選の可能性も排除できない。