議員定数削減に反対する むしろ微増するべきだ

公明党が離脱し、きわめて弱い政権基盤での船出を懸念されたのもつかの間、すぐさま維新の会を引き込んだ高市自民党。連立に際しては党首間で政策合意書を交わし、今国会からは自維二党が政権を担う構図となった。しかし、合意書にある議員定数削減を巡り、世論を二分する状態となっている。

 

・大義がない

批判が噴出する理由として、この法案に大義が見当たらないことが挙げられる。以下は維新が法案を提出した際の理由付け声明である。

「衆議院議員の定数削減並びにその具体的な方法等に関する法制上の措置の検討の在り方及び当該措置を講ずべき期限について定め、あわせて当該措置が当該期限内に講じられない場合の措置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」

削減数として挙げられる45議席という算出根拠は何か、なぜ1割なのか、そしてなぜ今なのか。これらの疑問に答えずして大義があるというのは無理がある。実際、首相の答弁を見ても、本当にやる気があるのかは疑わしい。また、わざわざ13年前に民主党政権が提出した定数削減案を引き合いに出したことにどういう意図があったのか、が筆者にはわからない。これでは、自民による公明党への当てつけ、維新による保守党や参政党への妨害工作と見られるのも無理はない。

当初は比例区のみ45議席を削減するという方針だったが、これに中小政党が猛反発した。現在の選挙システムでは中小政党は比例区に依存しなければならず、その削減は党の存続に直結する一大事なのである。参政党の神谷代表が「新興勢力潰しだ」と言うのはもっともだろう。最終的に、法案は衆院において小選挙区25、比例区20を削減するというものに修正されたが、今国会での審議入りは見送られた。

・代案

「ムダを削減する」という言葉に国民は敏感だ。実際、各社の世論調査でも議員定数削減については半数以上が肯定的な回答をしている。根底には「古臭いおじさん達が」「居眠りするような不届き物が」といった印象を持たれている議員らがなぜ高い報酬を得ているのかという不信感がある。物価高の中で政治とカネの問題が露呈し、最近は特にそういった傾向を強く感じる。

ただ、それが即座に定数削減に直結するかと言われれば疑問だ。定数削減以外にも、例えば国会議員の歳費を減らす道もあるはずだ。にもかかわらず、先進国の中でも人口規模に比べて少ないと言われる議員定数をさらに減らす方向に傾くのは何故だろうか。私見を述べるならば、一票の格差を是正するという観点からもむしろ10ほど増やしてもいいと感じる。

筆者の住む東京・多摩市では選挙区割りが度々変更された。その結果、過去2回の衆院選の間に同じ党から計3人の候補が拠点を置くこととなった。候補者名を覚えるのに苦労したことを思い出す。また、候補者側にとっても区割りが頻繁に変わっては長期を見据えた政治活動、さらには票集めに勤しむことができなくなる。

・連立離脱は?今後についての考察

先述したように、定数削減法案は今国会では見送られた。吉村代表をして「センターピン」と言わせる維新肝いりの政策なだけに、今後の連立政権運営にどのような影響を与えるかが注目される。

ただ、筆者は即座の連立離脱はないと読んでいる。理由としては、①維新が党勢を賭けたはずの連立入りをこうもあっさり捨てるわけがない、②真に通したい別の法案の存在がある、の2点を挙げたい。

①はメンツの問題でもある。わずか3か月にも満たない政権入りを、世間はどう捉えるか。芯のない情けない政党だと見放される恐れがある。また、連立入りを機に維新の政党支持率は上昇基調にある。高市人気を最大限利用したいことから、即座の離脱は考えにくい。②は定数削減騒ぎで搔き消された副首都構想のことである。むしろ筆者はこちらこそが最大の本命なのではないかとすら思う。維新衆院議員の地盤を見るとそのほとんどが大阪の小選挙区である。思うに、全国政党化を目指す一環としてまずは大阪都構想を実現し、周辺地域へのテコ入れをしたいのではないだろうか。こちらの法案には、行政機能の一極集中の是正など、それなりの理由もある。

今国会では定数削減を継続審議として来年の通常国会に引き継ぐことでひとまずは合意した。定数削減に埋もれた政治献金規制案の今後、更には衆院解散の可能性、これらの問題が動くであろう年明けの通常国会に注目したい。

参考

2025.10.22(水) 読売朝刊

与党・維新本格始動 「定数減」「副首都」賛否

 

2025.10.24(金) 読売朝刊

定数削減野党が慎重論 比例中小政党に打撃