命を燃やす「魂の踊り」ーギリヤーク尼ヶ崎、96歳の舞

津軽三味線の音色力強い響きとともに、赤い衣装をまとい、手製の使い古された笠と三味線を携えて、車椅子の男性がガッと姿を現しました。「伝説の大道芸人」と称される、ギリヤーク尼ヶ崎さん(96)です。筆者は、10月10日午後2時から新宿三井ビルディング55HIROBAで行われた青空舞踊公演に足を運びました。その孤高で崇高な踊りに圧倒され、気づけば涙が溢れていました。

じょんがら一代を披露する、ギリヤーク尼ヶ崎さん(2026年10月10日 筆者撮影)

ギリヤーク尼ヶ崎さんは、北海道函館市出身で、大道芸は1967年、38歳のときの銀座での公演が始まりでした。以来、半世紀以上にわたって路上で踊り続け、阪神淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震やアメリカの同時多発テロなどでは、鎮魂の「祈りの踊り」を披露しています。アメリカでの公演では「評価されたり評価されなかったり」だそうです。

配布されたチラシ表(2026年10月10日 筆者撮影)

配布されたチラシ裏、略歴(2026年10月10日 筆者撮影)

心臓にはペースメーカーを入れ、パーキンソン病、脊柱管狭窄症やけがと向き合っています。96歳の今、かつての俊敏さはありません。それでも、その体には長い年月をかけて積み重ねられた動きが確かに宿っているように感じました。現在開催中の「路上お邪魔ですか展」では、その踊りの映像も展示されています。

この日の演目は「じょんがら一代」「よされ節」「念仏じょんがら」の三つ。黒子と二人三脚で、一つひとつの所作をしっかりと踊りきりました。その圧倒的な力強さには、考えるよりも先に、心に直接訴えかけられる感覚がありました。命を燃やすような踊りに、生きることそのものの美しさを見ました。

車椅子を離れ、螺旋階段を力強く登るギリヤーク尼ヶ崎さんと見守る弟の光春さん(2026年10月10日 筆者撮影)

「ギリヤーク!日本一!」

観衆から声が飛びます。大道芸は、観衆があってこそ成り立ちます。踊り終えたギリヤーク尼ヶ崎さんは語りかけました。「今日のことを励みに、これからも踊り続ける」「皆さんも生活がありますから、頑張りましょう」。その言葉に背中を押された人も多かったのではないでしょうか。

凛々しい表情で舞うギリヤーク尼ヶ崎さんと黒子の紀あささん(2026年10月10日 筆者撮影)

何かを続けることは難しいものです。病身で体が思うように動かなくなっても、ギリヤークさんは路上に立ち、踊りで生き様を見せてくれます。観客に生きる力を与えるギリヤーク尼ヶ崎さんは、まさに伝説でした。「今の気持ちを忘れず、一生芸人でいます。皆さんも一緒に魂で天国まで踊っていきましょう」。生きる気力をもらった公演でした。

母の遺影を胸に、高齢の水かぶりに挑むギリヤーク尼ヶ崎さん(2026年10月10日 筆者撮影)

公演開始前に舞台に置かれた小道具、年季が入っている(2026年10月10日 筆者撮影)

参考記事:

2026年10月10日 産経新聞オンライン「黒子と二人三脚10年、96歳の大道芸人ギリヤークさん 東京・新宿で青空公演」https://www.sankei.com/article/20261010-5VIR5NCWVZOSLO36X2VK2TBANE/photo/IHG2B4TNUFIZTLEKYCLVQ5NCIE/