筆者は趣味で銭湯巡りをしています。家庭にお風呂やシャワーがない時代には、銭湯は衛生的な体を保つためのインフラのようなものでした。さらに地元の方のコミュニティー空間ともなって人々の生活を支えてきました。しかし、ほとんどの家にガスや水道が普及した今、その現状や役割を考えました。
銭湯の歴史は1591年頃に遡ります。江戸時代初期の「慶長見聞録」には、今の日本橋近くの銭瓶橋に初めて開かれたと記載されています。その後、江戸時代の銭湯は「湯屋」と「風呂屋」に分かれていきます。湯屋は現在の銭湯のような形式で、風呂屋は蒸気に満ちた部屋で汗をかき、その後で流す仕組みでした。
同じ風呂ということで考えるならば、銭湯や温泉との違いはどこにあるのでしょうか。区分は湯温や成分に由来しており、具体的な内容は温泉法や公衆浴場法で定められています。温泉は温泉源から採取され摂氏25度以上である、または溶存物質や遊離炭酸など国が指定した19種類以上の物質が源泉に含まれているものとされています。一方で銭湯は法律で、温湯や潮湯、温泉を使用して公衆を入浴させる施設と定義づけられています。
さらに、公衆浴場法の中には「一般公衆浴場」とヘルスセンターやスポーツ施設に併設されている「その他の公衆浴場」に分けられています。しかし、病院や老人保健施設のデイ・ケアとして使用する浴場、国・自治体によって寝たきりのお年寄りらを対象に入浴介助を伴うサービスに使われる浴場は対象外とされます。
さて銭湯の数ですが、毎年減少傾向にあります。総務省統計局によると2008年に2万8523軒あったのが26年には2万3668軒になり、その中でも一般公衆浴場に限ると5722店から2730店まで数を減らしています。その理由として利用客数の減少や燃料費の上昇、施設・設備の老朽化などが挙げられ、重い経営課題となっています。
筆者は去年から25か所以上の銭湯や温泉を巡りました。その中で東京都台東区にある萩の湯が印象に残っています。友人と一緒に訪れた時、同じお風呂に入っていた地元の方と話す機会がありました。その中で現地の歴史や情報をだけでなく、偶然出会った知らない人だからこそ話せるお話も聞き、銭湯の特別なコミュニティの魅力を再認識しました。
最近、銭湯へ向かうと近年のサウナブームが影響しているのか若い客層が増えたと感じます。そういった人々が地域の方と和気藹藹と話している姿を見ると、老若男女さまざまな人に愛されていることを痛感します。これからも銭湯へ足を運び、一期一会の出会いを大切にしていきたいものです。
参考文献:
2026年4月29日付 日経電子版 苦境の銭湯、中東緊迫が追い打ち 重油高騰で時短・廃業の危機
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD172YZ0X10C26A4000000/
2026年9月10日付 読売新聞オンライン いまなお物価統制令下の「銭湯」減少止まらず、サウナが活路…「新たな価値」提供広がる
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20260910-GYO1T00098/
2026年9月20日付 朝日新聞デジタル 銭湯、半世紀で8割消えた 日本一の銭湯県から見えた風呂文化の変容
https://www.asahi.com/articles/ASV9C3CSVV9COXIE00PM.html
参考資料;
厚生労働省 公衆浴場法概要
e-Gov 法令検索 温泉法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000125
e-Gov 法令検索 公衆浴場法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000139
厚生労働省 MHLW 平成20年度 保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/08/index.html
厚生労働省 令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/24/
