知っていますか? 広がる動物福祉

上野動物園のパンダが中国に返還されることになりました。27日に日本を出発し、今後は中国の施設で暮らすといいます。これにより、1972年にカンカンとランランが来日してから初めて国内からパンダがいなくなります。「パンダ外交」という言葉の通り、中国との関係に左右されてきたパンダそのものにも興味が募りますが、今回は動物園について考えたいと思います。

近年、動物園では「動物福祉(アニマルウェルフェア)」が重視され、動物たちが過ごしやすい環境への配慮が求められています。日本経済新聞の記事では、埼玉県の東武動物公園で「サル山」を改修し、アカゲザルの生息地である東南アジアの自然に近づけたと紹介されていました。

京都市動物園では、テンジクネズミのふれあい体験をなくしたといいます。新型コロナウイルスの影響でふれあいを中止した際、体調を崩す個体が減ったことから、テンジクネズミのストレスを減らすために廃止に踏み切ったそうです。また、ライオンやトラ、ジャガーなどの死去に伴い、これら大型ネコ科動物の展示が終了されました。狭いスペースでの飼育が動物福祉に反していると判断されました。さらに、屋外にあったアカゲザルの「サル島」も閉鎖され、サルたちは類人猿舎に移りました。高齢化が進むなかで、夏は暑く、冬は寒い「サル島」の環境での飼育は不適切というのです。

京都市動物園にある看板。オオヤマネコやツシマヤマネコ、サーバルなどが暮らしている(2026年1月23日、筆者撮影)

このように、国内の動物園でも動物福祉に沿った展示が行われ始めていますが、課題もあります。2024年の日本経済新聞の記事では、「動物福祉の考え方に基づいて飼育環境を改善するノウハウは国内では乏しい」ことや、日本は低料金の入園料と自治体の財源で運営する公立動物園が多いため、費用も課題になると述べられていました。

筆者は大学の4年間、京都市動物園のショップでアルバイトをしてきました。パンダやライオンはいませんが、ゴリラやゾウ、レッサーパンダなどのファンや家族連れ、観光客などたくさんの人が動物園を訪れる様子を見て、動物が人々の癒しになっている状況を実感しました。動物園の役割は人を楽しませることだけではなく、動物を保護したり、絶滅の危機にある動物を繁殖したりすることでもあると知りました。

動物園で仕事をするまで、「動物福祉」という言葉を聞いたことがありませんでした。今回調べてみて、動物福祉の考えは動物園での飼育だけでなく、畜産動物や甲殻類などにも広がっていると分かりました。皆さんも動物園を訪れたとき、動物に癒されるだけでなく、動物たちの思いについても考えてはいかがでしょうか。

 

 

参考記事

2024年5月7日付 日経電子版「動物園、サル山に土や水場 ストレス緩和へ飼育環境改善」

 

2025年12月23日付 日経電子版「ロブスター、生きたままゆでないで! 英政府が「苦痛」を認定」

 

2025年3月20日付 朝日新聞デジタル「京都市動物園でジャガー死ぬ 大型のネコ科動物の飼育はゼロに」

 

1月22日付 朝日新聞夕刊(大阪4版)11面(社会)「パンダ愛 永遠に」

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