10月28日から、殺人や銃刀法違反などの罪で起訴されている山上徹也被告の裁判員裁判が始まりました。検察側は、捜査に関わった警察官や医師、弁護側は被告の母親や宗教学者への証人尋問を予定し、審理は18回に及ぶ見通しです。元首相が銃撃されて亡くなる衝撃的な事件の公判を傍聴しようと、筆者は奈良地裁に足を運びました。
事件は2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で起き、演説中だった安倍晋三元首相が命を落としました。当時筆者は高校3年で、昼休みの時間にネット配信された速報を見てとても驚きました。山上被告は現行犯逮捕された後、警察による当初の取り調べに「特定の団体に恨みがあり、安倍元首相がこれと繋がりがあると思い込んで犯行に及んだ」と供述し、その後、銃撃された安倍元首相と旧統一教会との関わりが注目されるようになりました。
両親の信仰で子どもも入信させられるなどの「宗教2世問題」も注目され、23年12月には旧統一教会の被害者救済を目的とした財産管理特例法が成立しました。これは、文部科学省などが解散命令を請求した宗教法人に被害者が多数いる場合は、その宗教法人による不動産処分などを制限するものです。すでに旧統一教会は今年3月25日に東京地裁に解散を命じられ、4月7日に即時抗告しています。
初公判が開かれた10月28日、奈良公園内にある春日野園地には傍聴券を求めて多くの人が訪れていました。この裁判では事前にリストバント式の抽選券が配られ、配布終了の約2時間後に奈良地裁のホームページや配布場所で当選番号が発表されるというものでした。抽選券の配布時間は午前8時半~9時半。筆者が配布会場に着いたのは午前8時40分ごろでしたが、流れるように列が進んでおり、混雑しているようには感じませんでした。
筆者の抽選券の番号は282番。残念ながら、当選番号ではありませんでした。裁判所の近くでは「おー当たったよ!」と喜ぶ男性の姿も見かけました。この日、傍聴券を求めて727人が並んでいたことが報じられました。
午後1時を過ぎると、山上被告を乗せたとみられる車が警護車両に囲まれて奈良地裁に到着しました。車が地裁東側の車庫に入った後、シャッターが閉められ、山上被告が車から出てくるところを見ることはできませんでした。
その後、公判が始まったことをネット配信の記事で知りました。裁判所からはひっきりなしに記者が出てきます。電話をしたり、テレビカメラの前でリポートしたりする姿を見て、この裁判への関心の高さを改めて感じました。
午後5時ごろには、初日の公判が終わったことが報じられました。地裁の周辺の広場では、公判に臨んだ弁護士や、傍聴人に対する取材が始まっていました。
28日付の朝日新聞朝刊1面で、元裁判官の朝山芳史さんが「事実関係を争わない『自白事件』で18回もの審理日程を確保した今回の裁判は異例だ。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の影響という背景事情もある程度調べるということだろう」と、インタビューに答えています。まだ、公判は始まったばかりですが、検察側、弁護側双方の証人尋問の様子など、裁判に関する報道に引き続き関心を持っていきたいと思います。
参考記事:
28日付 朝日新聞朝刊1面(埼玉13版)「兄の自死契機「教団に打撃を」 安倍氏銃撃
、きょう初公判」
4月8日付 朝日新聞朝刊21面(埼玉13版)「旧統一教会が即時抗告 解散命令は「不
当」 東京高裁に」
2024年2月15日 朝日新聞デジタル 「財産流出防ぐ特例法の指定、検討へ 旧統一教
会めぐり文科省」
2023年12月13日 読売新聞オンライン 「旧統一教会の被害者救済、財産管理特例法
が成立…付則修正で立民・維新も賛成」





