閉幕まで1週間を切った2025年10月6日、大阪・関西万博を訪れました。筆者にとって2度目の万博。天候は晴れで日差しが強く、最高気温29℃と暑い1日でした。地下鉄の車内では万博のオフィシャルテーマソングが流れ、早くも盛り上っていました。会場の最寄り駅である大阪メトロ夢洲駅は、クレジットカードのタッチ決済に対応した改札機が半数以上あります。普段利用する駅では1、2か所ある程度であるため、海外からの来場客に配慮しているのが伺えます。
21万人の一般来場者が訪れた万博会場
混雑度がピークに
2025年10月6日筆者撮影
今回は、予約していた時間よりもあえて遅らせたことで、電車を降りてから30分ほどで入場できました。まず、真っ先に向かったのは、インドネシアパビリオン。ジャングルを再現するために、現地から運んできた植物が出迎えてくれます。滝のせせらぎが、心地のよい癒しとなっています。長蛇の列に並んで、ようやくたどりついた疲れも吹っ飛びました。出口では、コーヒーが振る舞われ、最後までインドネシアを感じることができます。
熱帯雨林のジャングルを再現したインドネシア館
2025年10月6日筆者撮影
優先的にパビリオンに入場できる事前予約を試みました。しかし、空きがあるものの、わずかな枠を狙って熾烈な競争が起きていました。列に並んでいる間にも何度もアクセスしますが、手にすることは叶いませんでした。「入場5時間待ち」の案内や、入場を一時停止する場面も。入場を一時的に止めているパビリオンでも、運良く列に加わることができれば、比較的スムーズに入れることもありました。
海外の見慣れない料理や、従来の常識を覆す食事の数々は魅力的です。日本を訪れる外国人の人気メニューは、1位の肉類に続き、2位はラーメンです。小麦ではなく米粉の麺を使用したグルテンフリーのラーメンがメニューにある店もあり、小麦アレルギーの人でも食べることができます。動物由来ではない植物由来の原料を使った「プラントベースフード」のラーメン、いわゆる「ビーガンラーメン」も複数の店舗で提供されています。ラーメンのスープは、豚骨や鶏ガラなどで取る動物系だしと、かつお節や煮干しを用いた魚介系だしに大きく分かれます。これに対し、プラントベースの食材は低脂質で、生産時の環境負荷も豚や鶏の飼育より少ないとされます。動物由来の食物を避ける理由は、健康や環境目的のほか、アレルギーへの対応、宗教上の理由など多岐にわたり、世界的に需要は高まっています。しかし、値段が2千円以上するものが多く、学生の筆者には痛い出費。待ち時間も多いので、列に並んでいる間に、持参した食べ物やお菓子で空腹を凌ぐことにしました。
次に向かったのは、「空飛ぶクルマ」です。万博の目玉で、デモ飛行は9月30日に始まったばかりです。提携するANAの担当者の方にお話を伺いました。機体は電動垂直離着陸機(eVTOL)で、燃料に石油ではなく電気を使用することから、二酸化炭素(CO2)を排出せず、環境にも優しい乗り物です。梅田駅・関西空港間など、100km以内の2点を短時間で結ぶことを目的に開発されました。滑走路を必要とせず、1日に何度もフライトが可能なため、空飛ぶタクシーとして期待されています。高頻度輸送で採算性を確保していくとしています。
5人乗りの空飛ぶクルマ 地上での移動はリモコン式
2025年10月6日筆者撮影
離陸の瞬間、歓声が上がりました。時速170kmで12分程度、会場付近の海上を8の字を描くように旋回しながら飛行を続けます。ヘリコプターよりも静粛性に優れていることに驚きました。デモ飛行は1日に3回あり、午前中は大屋根リングから見たのですが、静かさゆえに飛行中の機体の存在に気づく人はほとんどいません。技術的には万博会場の上空を飛行できるものの、「万が一を想定し見送った」そうです。それでも、機体を目視できるほどの近さでした。
パイロットは、機体を開発したジョビー・アビエーション社のアメリカ人3名が担当しています。今回の機長であるパディさんは、2日前から万博会場でのフライトに従事しました。飛行後、見学者から「Thank you!!」の声とともに、拍手が送られていました。将来は、ANAとジョビー・アビエーション社が手を組み、地域航空会社を設立する予定です。
一方で、課題もあります。「クレーンゲームと同じような要領で操作できる」ほど、シンプルな作りであるとのことですが、現在、空飛ぶクルマを操縦するには、大型旅客機の機長の資格が必要です。いずれは安全であることの証明を取り、「ヘリコプターパイロットと同程度の資格で操縦できるようにすることが目標だ」といいます。また、ヘリポートよりも頑丈なポートが必要で、新たな飛行環境の整備が必要です。アメリカでは自動車の車検に相当する「特別耐空証明」で5段階中4段階までを取得し、すでに最終段階に進んでいます。今後、26年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、27年にはアメリカや日本で空飛ぶタクシーとしてサービスを開始するとしています。
この日は、インドネシア館、夜の地球(輪島塗の大型地球儀)、空飛ぶクルマ、インド館、韓国館、国際機関館、マルタ館、チェコ館、ポーランド館、ベトナム館に入場・見学することができました。また訪れたいところですが、大阪万博はまもなく閉幕するため、今回が最後の訪問でした。次の博覧会は神奈川・横浜で、27年GREEN×EXPO園芸をテーマに開催するとのポスターがありました。
筆者がアルバイトをする飲食店では、万博帰りのお客様が多く、中にはアイヌの舞踊を万博で披露した人が来店され、接客時に万博の会話をする機会がよくありました。万博の話題から会話が広がる機会がなくなるのは寂しくてなりません。勤務先は1日の売上げが過去最高を更新し、万博がもたらした経済効果は計り知れません。世界中から大阪に人が来ました。閉幕で万博特需の賑わいが終わってしまうのは、淋しいです。しかし、万博をきっかけに日本を訪れた人が、日本の魅力を知り、訪日外国人が増えていくのではないかと考えると今後に期待が持てます。
参考記事
日本経済新聞電子版、2025年5月2日、「大阪万博発、ケンミン食品が「小麦なしラーメン」に託す20年構想」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD22DUS0S5A420C2000000/
読売新聞オンライン、2025年9月27日、「国民食のラーメン、未来の一杯はどんな味?…「世界食」目指せ」https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20250927-OYO1T50010/
日本経済新聞電子版、2025年9月30日、「ANAHD陣営「空飛ぶクルマ」、万博の空舞う 27年度以降に商用化へ」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC290N10Z20C25A9000000/