忙しい生活を送る私たちの疲れた心を癒してくれるパートナー、かけがえのない家族の一員でもあるペット。筆者の家にも11歳になる犬がいる。最近は老いが身体にも顕著に見られるようになり、顔まわりに白髪が増えた。昔の写真と比較すると、愛犬も歳をとったなと痛感する。同時に、私自身も同じように月日を重ねてきたと改めて感じることが多い。
昨今家で過ごす時間が増えたことで、ペットを飼う人や飼うことを検討している人が多いという。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「巣ごもり生活」の影響で、ペット需要が拡大しているのだ。米国の調査では、ペット保有者の72%が「ペットがいなければ新型コロナの大変な状況を乗り越えられなかった」と答えているといい、ペットの存在が不可欠という人が少なくない。それほど新型コロナによる社会的なストレスが大きいということだろう。また、需要増加の背景にはコロナ禍における「10万円給付金」があるという。政府からのコロナ対策として配られたお金がペット業界で使われているのだ。具体的に見るとペットショップでは売り上げが前年を上回るケースが相次いでいるほか小型犬専門のペットショップのプードルドットミー(堺市)は4~5月の売上高が前年同期比で1割以上増えた。全国展開するあるペットショップでは4~5月の売上高が5割増えたそうだ。ペット業界全体で動物たちの品薄が続き、一匹あたりの価格も以前に比べ跳ね上がっているそうだが、絶好調だという。
しかし、安易な気持ちでペットを飼うと起こる問題はすでに起き始めている。ペットを飼う人が増える一方で、保護も急増しているのだ。保護猫カフェととの森ではコロナの影響で引越しや収入の変化により、飼えなくなった猫の相談が相次いでいるという。件数で見るとおよそ例年の3倍以上にも及ぶそうだ。人間の身勝手な都合で飼育放棄などを経験した犬は悲しい過去を一生背負うだけではなく大きな心の傷を負ってしまうケースも少なくはない。このような状況で、ついにペットをめぐる規制がはられることになり行政も動き出す。来年6月から犬猫を扱うペット養殖・飼育方法にゲージの広さや個数に関する「数値規制」が行われる。主に悪徳業者を排除する目的が取られている政策で、昨年改正された改正動物愛護法に基づき導入される。欧米諸国では数量規制がすでに導入がされており、効果を上げているという。日本でどのような効果を生むか目が離せない。
家族同然に扱われるペットが増えている一方で、そうではない悲しい状況も発生しているペットをめぐる環境。しかし、少しずつ彼らをめぐる環境は変化しはじめてはいる。飼い主の都合に振り回され、不幸な想いをする動物が一匹でも減ることを願う。飼われるペットたちには何の罪もない。また、飼い主側も安易な気持ちで飼うのではなく家族の中で話し合い計画的に購入する社会になってほしい。人間が生まれる親を選べないように、動物たちも自分自身で飼われる家を選べない。飼う主の責任で、動物たちの幸せは左右されることを再認識するべきだ。
参考記事:
12日付読売新聞デジタル ペット販売に行政の目…犬猫飼育 数値規制へ
https://www.yomiuri.co.jp/commentary/20200911-OYT8T50119/
ペット需要拡大、在宅のお供に 安易な購入には懸念も
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60335110T10C20A6AM1000/
「家でペットと過ごす」需要が急拡大
https://news.yahoo.co.jp/articles/530a7a1a9c0f156c3898ad735bcf53da9d865328?page=1
在宅でペット人気も…世話できず保護が急増
https://www.news24.jp/articles/2020/09/09/07718880.html