先日、目にした光景です。バスで突然泣き出してしまった赤ちゃん。大きな荷物で両手がふさがっているお母さんが戸惑っています。すると、近くにいた女性があやし出しました。様子を見ていると、たまたま乗り合わせただけのようです。安心したのか、赤ちゃんはすぐに泣き止み、またぐっすり寝てしまいました。女性に感謝するお母さん。温かい気持ちになった出来事でした。
一方で、満員電車でぐずる赤ちゃんを見て、「はやく泣き止ませろよ!」と怒鳴る声を聞いたこともあります。「電車は子供に危険な状態だ」と感じる人が9割に達するという市民団体の調査結果もあるように、残念ながら、先日のバスでの光景は珍しいのでしょう。子どもに不寛容な空気が広がっているようです。
今朝の日本経済新聞の社説は「子供産みたくない社会に未来なし」。
少子と多死の帰結としての総人口の減少は、生産、消費、税収を減退させ、ひいては国力を衰退させる。
このように指摘します。
しかし、出生数の減少はとどまるところを知りません。2019年の国内出生数は86万4千人。2020年度の新成人122万人と比べても、猛スピードで少子化が進んでいるのは明らかです。
では、子どもを産みたいと思える社会になるためにはどうすればよいのでしょうか。着手すべきは、環境作りです。兵庫県明石市では、収入に関係なく、中学3年生までの医療費や2人目からの保育料を無料にしています。経済面の支援だけでなく、小学1年生の少人数学級や子連れで遊べる場所が多いのも魅力です。子育てをしやすい街としての評価が上がり、地価は6年連続上昇。泉房穂市長は
子どもを本気で応援すれば、子育て層だけでなく街そのものが元気になっていく。
と述べています。
調べてみると、周りに子育て世代が多いと安心して生活できるとの声もありました。地域をあげて支援すれば、子どもが増える。そして、子育て世代からのニーズにこたえようと、さらに住みやすい街づくりが進む。地域にとって「子育て」が身近になっていく。明石市ではこのような好循環が起こっていると感じます。都内を中心に覆う子どもに不寛容な空気は、変えられるはずです。少子化をこれ以上進めないためにも、働き方改革だけでなく子育てをしたいと思える環境作りが国や自治体に求められています。
参考記事
13日付 日本経済新聞(13版)2面社説「子供産みたくない社会に未来なし」