あらたにすの記事も2019年はあと数回。振り返ってみると多種多様な話題で盛り上がりを見せました。特に今年は災害に関する話題が多かったといえるでしょう。8月の九州豪雨災害や秋を迎えたころに発生した台風など、私たちは深刻な状況を目の当たりにすることとなりました。そして年々増えていく天災に危機感を覚えるようにもなったのではないのでしょうか。
本日の日本経済新聞朝刊にはそんな不安をさらに掻き立ててしまうような記事が。天候や地震、火災などの観測を24時間体制で担っている地方気象台が夜の業務を集約するというのです。
現在、地方気象台は全国に計50カ所、気象庁の出先機関として設置されています。業務内容は多岐にわたり、管轄地域の気象観測や天気予報、警報・注意報の発表だけでなく、その地域の自治体などの防災担当者からの問い合わせにも応じなければなりません。また夜間は天気予報が専門の予報官を含む2人が交代で宿直し、観測や警報発表にあたっているそうです。文系学部の筆者には専門的なことはわかりませんが、異常気象のづづく今日、重要な役割を果たしていることは理解できます。
そんな地方気象台が現在、岐路に立たされています。気象庁は22年度までに45か所で夜間業務を順次廃止する方針だというのです。20年度は東海、近畿、九州北部の13カ所が対象に。代わりに災害などに備えて職員1人が泊まり、夜間業務は管区気象台や規模の大きい地方気象台などが代行することになります。
記事内で特に気になったのは以下の部分です。
背景にあるのは国が進める合理化計画だ。限られた人員を重要施策に振り向けるため、国は19年度までの5年間に10%以上の定員削減を各府省に求めてきた。気象庁は夜間業務の廃止により、各地方気象台で3人程度の定員削減を見込む。
つまり、合理化を求めるために講じた策なのです。なにも合理化が悪いことだとは言いません。生産性を高めることは重要なことです。しかし、それと同時に何でもかんでも同じように縮減できると思ったら間違いです。この場合の合理化を「無駄を省いて能率化すること」(大辞林3版)とするのであれば、地方気象台が果たしている役割は質が違うのではありませんでしょうか。
高校生の頃、熊本地震を体験しました。夜中に町中に響いたサイレン音は今でも忘れることが出来ません。いつになったら情報が入ってくるのかと不安でたまりませんでした。大口をたたくことは出来ませんが、日ごろの天気予報から災害情報まで私たちは情報を頼りに生活しています。人びとの安心を支えている気象台の役割をなおざりにされてしまっては不安でなりません。
参考記事:
12月24日日本経済新聞朝刊12版社会2面「地方気象台、夜の業務集約45カ所廃止、管区など11カ所に 自治体は不安の声」