2020年度から始まる大学入学共通テストで活用する予定だった英語の民間試験が見送りになって1日。新聞各社も本日の朝刊で大きく扱っていました。
日本経済新聞では
“準備してきた高校や大学、試験団体からは反発や戸惑いの声が上がり、混乱は収まりそうにない。制度設計の甘さに目をつぶって見切り発車で導入に突き進んだ文部科学省の責任は重い。”
と強い言葉で文科省を批判しています。
あらたにすでも9月頃に入試改革の内容を疑問視する記事を一度出しています(しっかりしてくれ文科省 未来の見えない大学入試)。数年前に入学試験を受け、大学生活を送る筆者からしても後輩たちが振り回されている姿は可哀想で仕方がありません。子供が勉強しやすい環境を整備すべき文科省なのに、むしろ妨害しているのではないのでしょうか。見送りが決まったというものの、何が問題だったのかきちんと検証しておかなければ、これに代わる受験制度もどうなるのかわかりません。
今回の民間試験の併用で一番疑問に感じたのは受験機会の不平等さです。SNSでも都会と地方の差を訴える投稿をよく見かけました。中でも、今回取り上げたいのは僻地に住む学生たちについて。4月から幾度か記事にしているため聞き飽きた人もいるかと思いますが、対馬で生活をしていた筆者もその一人です。
文科省は僻地に居住している生徒の負担を軽減するとして、高校2年生時点での民間検定試験の結果を生かせる例外措置の具体的な手続きについて公表していました。しかし、その内容を見てみると、2年生のときに受けた民間試験の成績がCEFRのB2以上に該当していれば、その結果を本来は3年生で受ける試験の成績に代えることができるというものです。わかりやすく言うと、高校2年時までに英検の1級か準1級相当のレベルを身につけなければならないのです。受験勉強はいつ成績が上がるのかわからないところがあります。それを高校2年で指定したレベルまで持って来い、では無理があります。
また会場が設置されていない地域はどうなるのでしょうか。対馬にも英検やGTECの受験会場が設けられてはいます。しかし、電車はなく、土地の関係から町が分散している対馬では、会場にたどり着くまでに労力を使います。一つ会場を置けばよい。そんな安易に解決する問題ではないのです。
時代が変化していく中で、受験に求められるものが変わっていくのは理解できます。しかし、取り残されていく人が出ることには、疑問を感じざるを得ません。島で学生生活を送る学生たちは自分で選んで島へやって来たのでしょうか。「身の丈」という言葉に表れた萩生田文科相の考えが次の入試改革に影響を与えないことを祈るばかりです。
参考記事:
11月2日朝日新聞朝刊東京14番1面「英語民間試験、見送り」
11月2日日本経済新聞朝刊12番1面「英語試験、24年度から」
11月2日 〃 総合1面「英語民間試験、見切り発車で混乱拡大」
参考資料:
2020年度、「英検2020 1day S-CBT」実施概要のお知らせ
2020 年度「GTEC」大学入学共通テスト版 準備・検討状況のご報告
文部科学省 各資格・検定試験とCEFRとの対照表
教育新聞4月8日 英語民間検定試験の例外措置 文科省が適用手続きを公表