記憶、いかに伝えるか 終戦と令和

8月15日、令和初となる終戦の日を迎えました。
終戦から74年。日本武道館では同日、全国戦没者追悼式が行われました。厚生労働省によると、5391人のご遺族が参列し、うち戦後生まれが初めて3割を超えたといいます。
毎年この時期になると思うことがあります。私たち戦争を「経験していない」世代は、今後どのように戦禍の教訓を受け継ぎ、伝えていくべきなのか。そのヒントを求め、15日付朝刊を開きました。

注目したのは社説です。朝日・読売・日経の3紙とも終戦の日に関する社説を掲載しました。
朝日新聞は記憶を語り継ぐことの重要性について、国内だけではない、他国を含めた被害について目を向けるよう、戦後世代の責任について触れながら述べています。第二次世界大戦において他国に加害を及ぼしていたという事実は、戦争に関わった日本を含むすべての国の国民が自覚する必要があります。

次に読売新聞です。戦前のポピュリズムは、勝つ見込みが無いとの進言を押しのけ、政治の舵を切りました。情報力だけではなく分析力をも磨き、今の外交に生かすことが求められているとしています。惨禍に至った経緯を分析することは現代でも通用するということでしょうか。

最後に日経新聞。追悼のあり方について、近年の動きに触れています。日本人の思い描く平和意識が時代とともに変化していると指摘し、戦争を反省するにあたり、どのように追悼すべきか考えるよう呼びかけています。長期政権の軸足が片側に寄る中で、平和への願いをいかに保ち続けるかが重要であるようです。

各紙とも言葉は違いますが「戦禍の教訓」に触れています。しかし、生かし方は立場や場面によって様々であることもわかります。時間的に遠のいていく戦争の事実を、いかに伝え続けていくかは恒久的な課題でもあります。

今年2月にリリースされたスマホアプリ「記憶の解凍」では、AI技術のひとつ「ニューラルネットワーク」を活用してカラー化した“戦前の広島”の白黒写真を、現在地と連動させて画面に表示することができます。開発者と同じ研究室で別のソフトを開発した大学院生の方は「文字や動画など数多くのアーカイブを一つのデータベースに紐付けできれば、74年前から続く記憶を未来へ適切に継承できる」と日経新聞の取材にコメントしています。

戦後74年が経過してもなお、資料が見つかり、新事実が明らかになっています。8月になると「戦禍の記憶を風化させない」といった言葉を耳にしますが、直接的な経験を持たない私達が「記憶」を伝承するには、絶えず新たな視点を持ち続ける必要があります。私達にできることは、伝える姿勢を風化させない、ということなのかもしれません。

参考記事

15日付朝日新聞朝刊(東京13版S)8面(オピニオン)「社説」
15日付読売新聞朝刊(東京13版S)3面(総合)「社説」
15日付日本経済新聞朝刊(東京13版)2面(総合)「社説」
15日付日本経済新聞朝刊(東京★13版)31面(社会)「戦争の記憶 技術で守る」