24時間営業が当たり前とされてきたコンビニエンスストア。その数は2017年度時点で約5万8,000店にも上ります。その経営形態が曲がり角に差し掛かったのは今年2月でした。
今年2月、大阪府東大阪市にあるセブン・イレブンのとある店舗が午前1時~6時の営業を休止し、「19時間営業」に移行したのです。当然、セブン・イレブンの本部は24時間営業の継続を求めていましたが、店のオーナー曰く、バイトが集まらずこのままでは自分が倒れてしまうと危惧したそうです。
この問題を受けて全国のフランチャイズ店の悲痛な叫びがマスコミで取り上げられ、紆余曲折はあったものの他の大手コンビニ各社も時短営業を模索し始めています。そんな中、ファミリーマートでは加盟店のうち、24時間営業から時短営業への移行を希望する店舗がおよそ半数に上ることが分かりました。また、既に24店舗で実施している時短営業の実験では、条件によっては収益の改善につながることが判明しています。
ミクロ経済学の言葉で、限界生産性という言葉があります。労働力や機械など生産に必要な資源と実際に生産された財の関係をグラフにすると、資源を投入すればするほど追加的に生産される財の数は徐々に減っていき、次第に資源を投入してもこれ以上追加的に生産される財が無視できるほどに小さいものにしかならないという考え方です。グラフは右肩上がりにはなりますが、徐々に緩やかになり最終的にはほぼ水平線になるのです(投入される資源量と生産財の関係を生産関数と呼び、それを資源の量で微分したものが限界生産性です)。この考えに基づくと、投入する資源量をある程度減らした方が、収益が改善されるのは確かです。
現在は時短営業に批判的な声はあまりメジャーではありません。しかし、コンビニ各社があえて24時間営業を長年続けてきたのは、多かれ少なかれ店を利用する客がいるからです。多くの労働者は朝起きて昼間働き夜には家に帰り寝る生活を繰り返しています。でも、みんなが寝ている間にもたくさんの方が働いています。大きなトラックを夜な夜な走らせ続ける運転手や徹夜で働いているサラリーマン、そして日々の疲れを発散すべく朝まで飲み明かす人。どれも素晴らしいことじゃないですか。その時間帯に起きている人がいるということは、小腹がすいたり、喉が渇いたり、トイレを利用したかったり、理由は問わずコンビニを利用するニーズがあります。夜中に急病で病院に行かなければならないけど現金がないからコンビニのATMで下ろしたい人もいるかもしれません。彼らのことを考えると、時短営業に少し懸念を持たざるをえません。
もちろん、コンビニの従業員のことも考えなければなりません。駅前のコンビニを見ても時給900円後半から1,000円以上など今までより高い時給になっているところもあります。労務管理をはじめ、できるだけ負担の無いように経営する義務が本部にはあります。一方で、「自分は利用しないから要らない」という安易な考えになることなく、深夜の利用客の存在も頭に入れる必要があるのです。時短営業という、「不便」な世の中にしてから不満が出ては意味ありません。
参考記事:
27日付 読売新聞朝刊14版8面(経済)「ファミマ 時短本格化示唆」
2月21日付 朝日新聞デジタル「セブンイレブン「24時間営業限界」 FC店と本部対立」 https://www.asahi.com/articles/ASM2N6GVCM2NPLFA00N.html