近年、各地の都市部で再開発が進み、建設ラッシュが続いています。例えば、東京の渋谷。駅そのものは未だに工事中で、改札口の位置や仮設通路が頻繁に移動し、迷宮状態になっています。その一方で、駅前では「渋谷ストリーム」という巨大複合施設が昨年開業しました。今年11月には地上47階建ての「渋谷スクランブルスクエア」が、12月には「渋谷フクラス」というビルもオープンする予定です。数年前は単なる更地で、工事関係車両が出入りしていただけだったので、先日渋谷を訪れた際は、その変貌ぶりにとても驚きました。
我が大阪も負けてはいません。今日の日経、読売の朝刊にはJR大阪駅南西部の中央郵便局跡地に建設中の地上39階建ての巨大複合ビルが2024年に完成する見通しとのニュースが載っていました。同じ時期には「うめきた」と呼ばれる梅田貨物駅跡地24ヘクタール、つまり東京ディズニーランドの約半分の面積のうち、開発では後発だった17ヘクタール部分も街開きとなります。橋下徹元市長が提唱していたように、都市公園を中心に健康医療施設、コンベンション施設などが設置されるそうです。また、御堂筋沿いの地域でも建築中の巨大ビルが複数あります。
東京に負けじと、急速に再開発が進んでいる大阪の街ですが、今回はそこに見られる歴史と伝統を紹介したいと思います。
写真正面のビル「グランサンクタス淀屋橋」は、大正時代に建築された建物に由来があります。現在は居住用高層マンションとなっていますが、大正時代や昭和時代には銀行の本店や繊維商社の本社として使われていました。アラベスク文様を配し、洒落た旧ビルの面影を残すため、建て替えられる際にも、その外壁は取り壊さず保存されました。低層の歴史的建築物と上層の新築部分の色や形がうまく調和し、付加価値の高いマンションとなっています。
また、この写真の縦(南北)方向には、三休橋筋という道が走っています。この通りは、御堂筋と堺筋という巨大幹線道路に挟まれた船場地区の背骨なのですが、近年、再開発に伴い、歩道の拡張、電線の地中化、栴檀並木の植樹、大阪ガスの寄贈によるガス灯の設置が次々と実行されました。とても落ち着いた雰囲気で、夕方に歩くと商業の中心だった船場の趣が感じられます。
この写真には、天満市場と「ぷららてんま」と呼ばれる商業施設兼住宅マンションが写っています。この区画には、元々野菜や果物など青物を扱う小さな卸売店舗が数多く並んでいましたが、現在もマンションの低層階に入って営業を続けています。また、江戸時代からの歴史を持つ天満市場も、区画は狭まりながらもマンションの隣に残されました。
このように大阪では、まちの歴史や伝統を最大限保存しながら再開発が進められているのです。再開発は今後も続きますが、昔の人が築いてきた地域の趣をどのように継承しながら、活気溢れる街が再生されていくのか。府民として注目していきたいものです。
参考記事:
3日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)27面「大阪・キタ再開発24年に続々完成」
同日付 読売新聞朝刊(大阪13版)9面「大阪駅前『最後の一等地』再開発」