日々の食生活に肉料理は欠かせません。鶏の唐揚げ、牛丼、焼き豚、ジンギスカン・・・。私たちは様々な種類の肉料理をほぼ毎日、口にしています。しかし、気軽に食べられなくなる日が来るかもしれません。
これまで、世界の肉の需要と供給は、歩調を揃えて伸びてきました。しかし、そのバランスは崩れるかもしれません。国連の推計によると、世界の人口は2030年に86億人、50年には98億人に達するとされています。さらに、発展途上国に欧米風の料理が流入したことから、人口増のペース以上に肉の需要が爆発的に膨らむと見込まれています。一方、家畜のエサとなる穀物生産は、環境変動の影響によって伸び悩んでいます。農地面積もほとんど変わりません。拡大には大規模な森林伐採が必要になるため限度があり、今後も急激に広げるのは難しいのです。その結果、肉の供給が需要に追いつかなくなる恐れがあるわけです。
では、肉に代わるタンパク源として何があるのか。様々な選択肢が研究されています。現在、世界で広まりつつあるのは藻類です。日本でもユーグレナ社がミドリムシを使った食品や飲料を販売するなどしていますが、実は藻類は生産効率が非常によく、かつ栄養価も高いと知られています。穀物や家畜の生産と比べ、必要な土地や水が非常に少なくて済む一方、タンパク質を含む割合が大豆の2倍近くになる品種もあるとのことです。
昆虫食も別の選択肢として知られています。グロテスクな外観や独特の食感、味から敬遠する人は多いでしょう。しかし、そのような問題を取り除くため、エリー社(東京都中野区)は、味のクセが少なくうまみがあるとされる蚕「エリ蚕」をフリーズドライ製法で粉末にし、スープやドレッシングに使う開発を進めています。質は着実に向上してきているのです。
再生医療や創薬に使われる細胞培養技術を用いた「人口培養肉」もありますが、こちらはまだ開発途上のようです。東京大と日清食品の共同開発チームが、牛肉由来の筋細胞から各辺1センチの立方体状の筋組織を作ることに成功しました。とはいえ、数年以内に製品としてスーパーに並ぶことはなさそうです。
このような研究開発が進んでいても、タンパク質は、やはり家畜の肉類や魚類から摂りたいという人が多いでしょう。そのためには食品ロスの問題を解決することが最優先です。暴食をやめて消費量を適切にコントロールすることこそが、肉食文化の永続に欠かせないと思います。
でも、もし万が一、肉が足りない時代が来たとき、あなたは何を口にしますか?
参考記事
20日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)23面「科学の扉 新たんぱく源を探せ」