少し想像してみてください。
自分の家や学校、あるいは勤め先の建物が地震に脆いと分かったら、不安になりませんか。特に自宅であれば、その恐怖はより一層大きいと思います。では皆さん、警察や消防、病院の施設が「免震不足」であったと分かったら、どうでしょうか。大地震が起きたときに人命救助や消火活動ができなかったら、恐ろしいですよね。ですが、私たちの身近にこのような事態になる危険性をはらんだ地域が存在しています。今日は、「東洋ゴム改ざん問題」について考えていこうと思います。
東洋ゴム工業(大阪市)が製造した免震ゴムが国の基準を満たしていない問題で、この免震ゴムが使用されている55棟の建物のうち11府県18棟の具体名が明らかになり、その多くは官公庁の施設でした。読売新聞の取材によるものです。関係する都府県は東洋ゴムの担当者を呼んで詳しい説明を求め、確認作業に追われています。同社に対し、「うちは大丈夫か」という住民からの電話が2000件も寄せられていることからも、人々の防災への不安が高まっていることがうかがわれます。
免震ゴムは国交相による性能認定が必要であり、同社の担当者がデータを改ざんして申請したことが、原因とされています。地震大国である我が国において、今回のような免震装置や耐震設備を扱う企業によるこのような不祥事は大変残念に思います。東日本大震災から4年が経過したばかりです。東洋ゴムには、免震ゴムの交換などを含め徹底した対応策を求めるのは当然のことです。このような不正は、震災という多くの命を奪い、残された人々の心を深く傷つけてきた災害に対する備えを蔑ろにしかねない行為であり、その責任は非常に重いものです。
ただ、我々にできることはないのかも考えたいものです。今回は被害が発生する前に発見できましたが、震災が発生し、倒壊などの事態に陥った場合、企業責任を問うても手遅れです。この事件を他山の石とすべきです。公共の建物であれば、住民の代表である議員に行動を求める。集合住宅であれば、管理組合などでメーカーなどに検査を依頼する。安全を当たり前だと思わず、安全ではない可能性の存在を常に疑うという姿勢が求められるのではないでしょうか。
今回に限らず、事件や事故があると、「自分には関係ない」と感じることは少なくないでしょう。筆者も同じです。むやみに恐れる必要はないでしょうが、前述したように「他山の石」の気持ちで、自らの家や街の安全を疑ってみてもいいのではないでしょうか。
参考記事:17日付読売新聞朝刊(東京14版)1面「免震不足 消防・病院でも」・39面(社会面)「免震 うちは大丈夫か」より