居住の権利を守りたい 冬のホームレスの姿から

今朝の新聞を読んでいると、「虫たちが冬を乗り越えることを『越冬』という」とあった。虫たちは土の中に身をひそめる。あるいは卵や幼虫、サナギの状態で春を待つ。ごくわずかだが、小枝などに擬態して冬を越すトンボの成虫もいるという。

東京のホームレス支援の現場も、春のきざしが見え始めていることにほっとしている。冬の路上生活はあまりに過酷だからだ。
私が池袋のNPOで支援ボランティアを始めてから3年半が経とうとしている。この冬もさまざまなできごとがあった。

この冬のホームレスたち
 毎週水曜日に行っている夜回り。先月、池袋駅構内の自由通路の隅に座り込む初老の男性を見つけた。ここではWさんとする。まず、しゃがんで目線を合わせる。夜回り中であることを伝え「最近どうですか」と尋ねた。ここ数日は一日一食程度で、今日はまだ何も食べていないというので、多めにおにぎりやパンを手渡した。また、足が痛むという。靴下を脱いでもらうと片足が赤黒く腫れ上がっていた。何かの拍子に痛めたらしい。可能であれば支援につながりたいと言うので、後日、相談支援スタッフにつないだ。Wさんには、生活保護の受給やアパート転宅のめどが立つまで住める団体所有のシェルターの空きを待ってもらうことになった。

数日後の炊き出しで会ったときには、「新しい靴がほしいんだけど、衣類配布でいいのがなかった」と話していた。寄付でいただいた服やカミソリ、石鹸などの生活用品をブルーシートの上に広げて持っていってもらっているのだが、必ずしも希望のサイズがあるとは限らない。そのため、コーディネートがうまい人もいるが、ちぐはぐな格好の人もいる。

駅から少し離れると、高架下や建物の軒下に段ボールハウスをつくって寝ている人々がいる。ハウスの中で、さらに寝袋にくるまる。とくに冬は、寒さをしのぐために隙間なくつくるので、中の人がどういう状態か見えないこともあり、心配になる。東京のホームレスの様子が、最近「the japan times」の記事でも取り上げられていた。

5年、10年と路上生活が長期化している人が少なくない。シェルターへの入居や生活保護の受給など福祉につながることを頑なに拒む人も、厳しい生活が続くほど先に身体にガタがきてしまう。福祉を拒む理由はさまざまだ。自分でなんとかできるうちは頼らない、という人や、役所に相談に行ったもののうまく申請できなかった人もいる。生活保護受給者を施設に住まわせ、利用料として保護費を巻き上げる「貧困ビジネス」に巻き込まれることを恐れる声も。少なくとも私が出会った中には、好きでホームレス状態になっている人はいなかった。

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