じぇじぇ!三陸が熱い!?

東日本大震災で壊滅的な被害が出た岩手県沿岸の三陸地方。震災から8年目の今年、大きな盛り上がりを見せようとしています。

中心的な存在が同県釜石市。今年9月から11月にかけて開催されるラグビーW杯では、市北部にある釜石鵜住居復興スタジアムが予選と敗者復活戦の会場になります。釜石市の野田武則市長は「(W杯に向けた取り組みが)釜石市のみならず、三陸沿岸地域全体の再生と、子どもたちはじめ地域住民全員の、未来への希望につながっていくものと信じている」と期待を前面に出しています。

また、来月9日には復興支援道路である東北横断道釜石秋田線の釜石-花巻間が全線開通します。さらに釜石市中心部を結ぶ三陸沿岸道路も同日開通し、釜石市は「沿岸部の交差点」になります。釜石市内を通る沿岸道路は、8年前の震災発生直後、避難路として多くの命を救いました。野田市長は「『命の道』として機能した道路が、全線開通で『希望の道』となるように」との談話を発表しました。岩手県の達増拓也知事も「W杯開催で復興道路を利用して国内外から多くの方々が訪れることを期待する」としています。

▲来月開通する釜石市周辺の高速道路(11日付朝日新聞朝刊より)

勢いは釜石だけに止まりません。三陸地方を走る三陸鉄道は、来月23日に三陸鉄道リアス線を開通させます。JR山田線宮古-釜石間の三陸鉄道移管へ伴うもので、もともと三陸鉄道が運行している北リアス線、南リアス線と繋がり、岩手沿岸部を南北に貫く鉄道が一つの会社によって結ばれることになります。リアス線の「南北統一」を前に、沿線地域では開通への期待に満ちているようです。

県の取り組みも見逃せません。岩手県は今年6月から8月にかけて総合的な防災復興行事「三陸防災復興プロジェクト2019」を実施します。官民一体となり、防災関連のシンポジウムや文化遺産・伝統文化の推進事業を同時多発的に開催します。開催地域は沿岸の13市町村で、観光振興のみならず、防災啓発や復興状況の発信を目的にしています。

このように、交通インフラの整備や大規模イベントの開催によって、三陸地方の2019年は熱いものになろうとしています。外国人観光客の増加で日本経済が潤う中、残念ながら東北地方ではその恩恵が首都圏などに比べて希薄です。東北出身の筆者としては、ラグビーW杯などを通じて東北にインバウンド効果が波及して欲しいところ。復興は道半ばですが、多くの人が来県すれば、復興の勢いは増すはずです。

ただ、盛り上がりの一方で心に留めるべきは「震災の風化」です。先月18日、津波で多くの犠牲が出た岩手県大槌町の旧役場庁舎が解体されました。震災遺構として保存を求める声もありましたが、盛岡地裁に起こした解体差し止めの住民訴訟は退けられました。震災の爪痕が消えゆくと共に、人々の記憶も薄れつつあります。

同じ惨事を繰り返さないためにも、震災の事実を伝承する重要性が年々高まっています。現地に行くこと、現地を見ること、現地の声を聞くことが欠かせません。三陸で様々な催しがある19年は、震災伝承の一つの出発点になり得ると考えます。

皆さん、三陸に足を運んでみませんか?

関連記事:
11日付朝日新聞朝刊(東京12版)23面(地域面岩手版)「釜石道と三陸道 来月9日連結」
同日付日本経済新聞朝刊(東京12版)26面「合言葉は『W杯までに』」
1日付河北新報オンラインニュース「<岩手・大槌旧役場庁舎>本体の解体終了」

参考文献:
釜石市「ラグビーワールドカップ 2019の対戦カード決定に対する釜石市長コメント」(http://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/shokai/rugby_city/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/11/02/sityoukoment20191102_1.pdf
三陸防災復興プロジェクト2019実行委員会HP(https://sanriku2019.jp/