理由もなくイライラする。食欲が止まらない。腰が鉛のように重たく感じられる。生理前の私の体に起こる症状です。その種類は人によって異なり、程度もそれぞれですが、多くの女性が何らか不調と向き合っています。毎月必ず数日間、この苦しみに耐えなくてはなりません。
つい先日、同様の話をしていたところ、聞いていた同世代の男性が衝撃を受けていました。女性には当たり前のことでも、彼にとっては新鮮な事実だったようです。誰もが知っているものと思い込んでいた私は、彼の反応に驚きました。男女の区別をなくすことばかりが叫ばれる昨今ですが、まずは両者の違いを知ることも必要です。
女性軽視の残るインドでは、生理は不浄なものとしてタブー視されています。生理中の女性と食卓を囲まなかったり屋外で就寝させたりする地域も残っているそうです。
政府の調査によると、15歳から24歳で衛生的な生理用品を使っていない女性は約4割。生理用ナプキンが高価なことや知識不足が背景にあります。古い布や木の葉、灰などで代用するため、感染症の発生率も高く、不妊や敗血病で死に至ることもあります。初潮後に学業を諦めたり生理中の通学を避けたりするケースも少なくありません。
そんなインドで安価な生理用ナプキン(パッド)を開発し、多くの女性を救ったのは男性でした。「パッドマン」と呼ばれるムルガナンタムさん(56)です。新妻が自宅で汚いぼろきれを隠すのを見た彼は、それが生理の時に使うものだと知り驚愕しました。
試作品作りに協力してくれる女性は見つからず、村人や家族からも奇異の目が向けられました。市販品の仕組みを調べるために使ったのは、ゴミ箱に捨てられた使用済みのナプキン。ヤギの血を使って、自らナプキンを下着につけて漏れないかを実験しました。そうして、安価なナプキン製造機の開発に成功しました。
製造機は、ケニアやバングラデシュなど発展途上国を中心に約40カ国にまで広がっています。10万人の女性に仕事をもたらすことにもなりました。
インドの偏見ほどではありませんが、生理の話は日本でも話しにくい雰囲気があります。思い出すのは、小学校の水泳の授業。休む理由を男性教師に報告するのに羞恥心がありました。今思えば、決して恥ずかしいことではありません。女性に生まれれば自然に起こる現象だからです。
向き合う女性も、その側で共に暮らす男性も、すべての人が理解を深める。特別なことであるとの認識を変える。そのことが、誰もが暮らしやすい社会の実現に不可欠です。
参考:
4日付 朝日新聞朝刊(東京13版)7面(国際)「「パッドマン」女性を救う」