1人暮らしの部屋に家族から届いた宅配便。荷物には身体を心配する家族からの手紙が添えられていました。心温まるその手紙、郵便法に違反する可能性があることを皆さんは知っていましたか?
ヤマト運輸は3月末でメール便サービスを廃止すると発表しました。利用者が違法だと認識せずに、手紙などの「信書」を同封してしまうことを避けるためです。「信書」とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」(総務省HP)と定められています。
「これは文書の内容による定義であり、非常にあいまいなものだ。」そう主張するヤマト運輸は、総務省に大きさなどの規格を定めるよう求めてきましたが、認められませんでした。「信書」の同封が違法であるとはわたしも知りませんでしたし、文書の中身によって分類されることには違和感を持ちます。利用者が郵便法を正しく理解して利用することは難しいでしょう。法律をより明快な基準に改める、もしくはサービス提供者が法令順守に努める必要があります。メール便の国内シェアのほとんどは、日本郵便とヤマト運輸が握っています。ヤマトがメール便を諦めてしまうと、規制緩和が進んできた郵便事業がこれでは逆戻りです。問題は信書の定義があいまいで認知されていないことで、これが法を犯す原因です。ヤマトがメール便サービス廃止を決めたのは利用者が法を犯してしまうリスクがあるからでした。一番簡単な解決策は信書の定義を明らかにし、国民の認知をあげることではないでしょうか。
メール便の廃止は、日本郵便が独占している「信書」業務に対する問題提起にもなっています。日本郵便の民営化以後、いまだに信書の取扱いを始めた会社はありません。信書を取扱うためには全国に10万以上のポスト設置という参入規制が存在するためです。郵便インフラにポストが必要とはなんとも時代遅れなルールではないでしょうか。約5万店舗を数えるコンビニエンスストアのように全国にサービス網を展開する企業グループと手を組めば、新たな郵便サービスが広がることも期待できるはずです。
総務省は遅れている郵便の規制緩和が遅れていることを認識し、そのピードを速める必要があります。
【参考記事】
1月23日付朝日新聞朝刊 経済面「ヤマト、メール便廃止」
同日付 日本経済新聞朝刊 消費biz面「ヤマト、メール便廃止」
同日付 讀賣新聞朝刊 経済面「クロネコメール便廃止」