どうなる新市場 周辺整備を第一に

「日本の台所」に例えられた築地市場が6日閉場し、11日開場の豊洲へ、「引っ越し」作業が連日続けられています。8日付朝刊では、各紙とも移動の様子を伝え、電動運搬車「ターレット(ターレ)」の大移動が話題となりました。

©朝日新聞社 築地市場から豊洲市場に移動するターレット=7日午前5時14分、東京都江東区

豊洲への移転については、今でも安全面の話題を中心に賛否が別れています。
湾岸地区に住む知り合いに意見を仰いだところ、「移転の賛否よりも、周辺の整備が十分でないことが問題なのでは」とのことでした。確認してみると、豊洲市場へアクセスできる公共交通機関はゆりかもめと新たに開通するバス路線のみです。地下鉄の延伸構想がありますが、まだまだ予算捻出といった現実的な計画段階には至っていません。注目を集めたターレの移動で使用された橋も、実は未開通区間。工事看板には「11月上旬 暫定交通開放予定」と控えめな文言が書かれていました。交通面で不安を覚える理由がわかりました。

©あらたにす 豊洲市場前に立てられた立て看板=8日、東京都江東区、筆者撮影

築地はというと、周辺に地下鉄の駅が多く、交通の便は良いと言えます。また、忘れてはならないのが、築地市場の移転後も一部の飲食店や場外市場は築地に残るということです。鮮魚や青果を扱う「場内」が東京都の設置であるのに対し、精肉や加工、道具を扱う「場外」は商店街と同じ扱いであり、移転の対象外。店単位のような小口の買出人は、今後も築地を利用することになります。豊洲移転は市場移転というよりは、分離を意味するように思えます。

©あらたにす 引っ越し作業の進む築地市場=9日、東京都中央区、筆者撮影

豊洲市場の中にも飲食店や物販店が移転します。築地めしならぬ「豊洲めし」は話題になるでしょうか。周辺は空き地が目立ち、計画も「これから」。豊洲駅のある街中までは約1km、ゆりかもめで2駅分の距離があり、利便性が高いとは言えません。

延期が続いたことから「やっと」との見方の多い豊洲市場ですが、まだ課題は山積みのようです。まずは周辺の整備を優先すべきではないでしょうか。

参考記事
8日付 朝日新聞朝刊(東京12版▲)3面(総合)「築地閉場 最新設備の豊洲へ 卸売市場 生まれ変われるか」
8日付 朝日新聞朝刊(東京14版)35面(社会)「豊洲 夜明けもうすぐ 引っ越し本格化」
8日付 読売新聞朝刊(東京13S版)1面「夜明け前 豊洲へ一路 ターレ行く」
8日付 読売新聞朝刊(東京13S版)29面(社会)「「築地名物」豊洲奔走 11日開場へ準備急ピッチ」
8日付 日本経済新聞朝刊(東京★14版)27面(社会)「築地の「ターレ」豊洲へ 進む引っ越し 未明に大移動」