幸せを呼ぶ「回想法」

「今朝食べたものを覚えていますか。」

こんな単純な質問でも、脳が衰えてくると答えるのが難しくなります。歳を重ねるにつれ認知症のリスクは高まり、記憶を呼び起こすことはより一層困難を極めます。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2045年には日本全体の高齢化率は36.8%まで上昇。人口の多くを占める高齢者が元気に暮らせる社会づくりが喫緊の課題となっているのです。

そんな中、懐かしい記憶を振り返る「回想」法に注目が集まっています。脳の活性化だけでなく、精神的な安定をもたらす効果もあり、医療現場では認知症に対する心理療法として活用されています。

これなら、特別な準備も設備も必要なく、簡単に実践できます。祖父母の家に行ったときにやってみたいと思いました。続けるためには、好奇心を持って話を聞くなど、聞く側のマナーが重要です。もちろん、話す側も、聞いている人を飽きさせない、喜んでもらえる工夫が必要になります。

誰にでも、幸せだった思い出があるはず。認知症患者でも、これらの記憶は必ず残っているそうです。たしかに、お年寄りと話すと、昔の自慢話や苦労話に花を咲かせていることが多いように感じます。

今、高齢者が直面しているのは、「健康、経済(カネ)、孤独」の「3K」。不安定な時代に、本当に大事な資産は「思い出」かもしれません。

私が高齢者になるのは、40年以上も先のことです。もちろん、長い人生において、楽しいこともあれば、苦しいこともある。でも、あとで思い出したときに、懐かしさを覚え、幸せを感じる、そんな人生を歩みたいものですね。

 

参考記事:

4日付 読売新聞朝刊(東京12版)13面(特別面)「青春 記憶の門の鍵」

同日付 読売新聞朝刊(東京12版)16面(社会保障)「自助と共助 不便感じず」