新しい「パックご飯」

 災害が多い日本では、缶詰や非常食といった長期の保存ができる食品が必需品ですよね。そんな保存食のなかでも日々の生活で忙しい人の味方、レンジで温めるだけで食べられる「パックご飯」の技術開発を支援すると農水省が発表しました。現在は半年ほどの賞味期限を気密性の改善などによって、味を落とさずに二倍にまで長持ちさせることを目指しているそうです。

 日本の食文化を支える米ですが、その品質の高さからアジアでも人気があり、中でも「パックご飯」は手軽さから手堅い人気があるようです。しかし、現在の賞味期限では、輸出先の国の通関手続きが長引くと期限が切れて、廃棄されてしまうこともありました。そのため輸出を増やすには避けては通れない課題だったようです。

 今回、農水省が資金面での支援を決めた背景には、加工食品製造業者のほとんどが中小・零細企業なため開発資金を自己負担するのが難しい事情がありました。農水省のほか、加工食品業者、大学などが連携して来年度から研究を進めていくとのことです。

 一方で、生産者から消費者への橋渡しとなる米卸業界は苦しい現実に直面しているようです。2014年、資金繰りが厳しくなった中小の米卸業者が、前年産米を超低価格で外食産業に提供しました。その結果、同年の米価は暴落しました。それも三年間で回復し、14年10月の産地と米卸の取引価格(相対取引価格)を100とすると17年10月には127まで持ち直しました。

 ところが、小売価格自体は、「この価格ならお買い得」という値頃感があることからあまり上昇しておらず、相対取引価格の上げ幅は小売価格の二倍以上の差が出てしまっているそうです。コンビニのおにぎりや「パックご飯」など、小売りの段階ではすでに価格改定の動きが出ており、今後は消費者に適正な価格で購入してもらうため工夫や努力が求められそうです。

 そうした意味では、国外での販売促進を目指した「パックご飯」の改革は国内での消費のあり方をよりそれぞれの生活にあった形態に変える可能性を持っており、袋での販売もよりバラエティの富んだものになるかもしれません。今後の小さな改革が日本の米文化に新たな風を吹かせるかもしれません。

参考記事:
10日付 読売新聞朝刊(14版) 4面(政治・経済)「「パックご飯」期限2倍 新素材開発へ」
11月28日付 日本農業新聞 「米価 3年連続上昇も… 小売価格 転嫁進まず 全米販 取引是正へ相談窓口」
14年10月2日付 農業協同組合新聞電子版 「【26年産米 米価暴落】苦しいのは生産者と米卸」