欧州のトイレ事情から見る男女格差

 外出先でトイレが見つからず困った経験はありますか。

「我慢できなかったのなら、男性用トイレを使うべきだった」

 やむを得ず道端で用を足した女性に対して男性裁判官が発した言葉です。オランダの首都アムステルダム中心部では、男性用公衆トイレが30カ所以上あるのに対し、女性用は数カ所しかありません。

「私だって恥ずかしい思いをしたし、好きで道ばたで用をたす女性はいない」。 

簡単な囲いがあるだけの男性用の小用専用トイレを女性がどう利用できるというのでしょうか。 

 深夜、帰宅途中にトイレに行きたくなったピニングさんは、仕方なく道路脇でこっそり用を足しました。飲食店はすでに閉店しており、女性用の公衆トイレも見つからなかったのです。その様子がパトロール中の警察官に見つかり、100ユーロ(約1万3200円)の罰金刑を言い渡されました。

 オランダは、もともと男女平等に対する意識の高い国です。世界経済フォーラムの世界の男女平等度ランキングで今年は32位でした。ちなみに日本は144カ国中114位。10月下旬に成立したルッテ政権では、閣僚の3割以上が女性だったにも関わらず、メディアが「男子中心」と批判したほどです。

 一方、隣国ベルギーには、「小便小僧」とともに「小便少女」の像が設置されています。男の子の像しかないのは男女平等に反するとの指摘から、後になって設置されました。そんなベルギーの首都ブリュッセルでも、男性用の公衆トイレが31カ所なのに対し、女性用は8カ所。欧州の公衆トイレは有料のものが多く、飲食店も防犯上の理由などから一般に開放していない現実があります。 

 記事の通り、海外の多くの国でトイレを見つけるのはたやすいことではなく、古く汚れている場合も少なくありません。外国に滞在中、トイレを使うためにカフェでコーヒーを注文し、カフェインの作用でさらに行きたくなった経験があります。

 アムステルダムでは、今回の騒動をきっかけに、SNSで抗議活動が盛り上がり、行政側は改善に乗り出しています。空気を吸うのと同じように、生きていく上で必要なトイレ。男女格差ももちろんですが、人間らしく生きるための環境が整備されていないという点では人権が保障されていないのも同然です。どこにいても誰もが気持ちよく生活できる社会。少しでも早く実現すると良いですね。

 

参考:

1日付 読売新聞朝刊(東京13版)10面(国際)「公衆トイレに男女格差」