生活保護は他人事?

 年々、増え続けている社会保障給付費。生活保護の受給者数も次第に増加し、高止まりを続けています。そんな中、2013年度には自民党が生活扶助の基準を引き下げるなど、受給者への風当たりは一層厳しくなってきています。これまであらたにすでも、 「生活保護のままでは大学に行けない?」「生活保護は悪くない」で、制度の問題点やその在り方について考えてきました。

憲法が、単なる「最低限の生活」ではなく、「健康で文化的な最低減の生活」を保障した意味を考えてほしい

 木村草太氏は、コラムで強く主張しています。もちろん、社会保障費を抑えることは必要かもしれません。それでも、保護基準を下げることは、貧困の連鎖を生み出すだけで抜本的な解決には至らないでしょう。生活扶助を維持し、さらに雇用紹介やサポート制度を拡充することで自立を促す。その結果、将来的に受給者が減り、その分納税者が増える。そうした手立てを講ずるべきです。

 「働いていない人にお金をあたえるのか」。生活保護に対して、そんな誤ったイメージを持っている人も多いのかもしれません。こうした偏見が受給者に対する視線を厳しくし、削減の風潮をもたらしているのだと思います。この背景には、生活保護を受ける人と自分たちとを分離して考えていることがあるのではないでしょうか。

 記事には、いまは何とか生活を自力で支えられている人も、不慮の事故や病気がきっかけで、生活に窮する可能性があると指摘されています。それに加えて、貧困の背景にある社会構造にも目を向けたいものです。大学の授業の一環で生活保護を受ける子供たちの学習支援活動に参加しましたが、教室にいる子どもたちのほとんどが片親家庭です。一日中働いても非正規雇用で年収が少ない、いわゆるワーキングプアという問題から、精神的な疲労で体を壊したり、子どもと過ごす時間が取れなかったりすることもあります。外国にルーツを持った親もいました。高齢の受給者も増えています。

 そこからは、貧困が、様々な要因が複雑に結びついて起きていることがわかります。それを紐解いていくと、男女の賃金格差、女性や持病を抱える方の雇用問題、課題の残る育児制度など、社会に潜む深刻な問題が浮き彫りとなります。非正規雇用の劣悪な労働環境や不当な解雇は、学生もアルバイトで直面するかもしれません。また、高齢者の働き方というものも、将来の私たちにとって身近なものであるといえます。

 「助ける」という視点ではなく、すべてはつながっていて、よりよい暮らしのために、法や社会の制度を変えていく。そういった社会全体の問題として考える視点こそ不可欠だと思います。

 参考記事:31日付 朝日新聞朝刊(東京12版) 13面(オピニオン)「明日を探る 最低限度の生活保護ではなく」